社内の短いメモを整理するだけなら、毎回大きなクラウドAIを呼ぶ必要があるのでしょうか。PrismMLが2026年10月15日付で発表した Ternary Bonsai 2の2B・4B・9B は、ローカルAIの選択肢を小さい側へ広げるモデルです。すでにある27Bに、新しい3サイズが加わりました。公式発表
ふくふくでは、2BのMac向けMLX版をApple M2 UltraのMacで動かし、架空の日本語メモ3件を試しました。日本語で応答しましたが、2人分の作業から1人分を落とす結果も出ました。軽さ、導入条件、実際の欠落をまとめ、どの仕事から試すと判断しやすいかを考えます。
発表にある2Bの0.43GBと、画像処理部分を含むMLXパック約1.20GBは同じ対象の数字ではありません。動作時にはさらにメモリを使います。また、今回日本語が出力されたことは、翻訳・抽出・要約の精度保証ではありません。試用3件だけで業務品質や小容量Macでの快適さを断定しないでください。
新しくなった点:2B・4B・9Bを選べるローカルモデル
新しい3モデルはQwen3.5を基にしており、重みを−1・0・+1の3値で表す方式を採ります。モデルを表す数値を小さく持つことが狙いです。提供元が示すフットプリントは2Bが0.43GB、4Bが0.95GB、9Bが2GB。重みはApache 2.0で公開されています。発表ページでは同日から利用可能としていますが、正確な発表時刻は確認できませんでした。発表と提供条件
ここでBはパラメータ規模の目安です。「9Bならどの仕事でも2Bより正確」とまでは言えません。どのサイズを選ぶかは、手元の入力で失敗を減らせるか、そのために増えるメモリと待ち時間を受け入れられるかで決めます。
| 見る数字 | 2Bで確認した内容 | 読み違えないための注意 |
|---|---|---|
| 発表のフットプリント | 0.43GB | MLX一式のダウンロード量や実行中メモリと同一ではない |
| MLXモデルファイル | モデルカードは約1.20GBと記載 | 言語部分に加え、FP16の画像処理部分を含む |
| 今回の実行時メモリ指標 | ランタイム報告のpeak_memoryは約1.48GBまで | OS全体の使用量や必要RAMではない。短文・画像なしの条件 |
2Bの公式MLXモデルカードは、保存形式の付随情報と画像処理部分を説明しています。モデルファイルが入る空き容量だけを見て導入を決めず、実行時の余裕も確保します。長い文書や画像を渡した場合の消費量は、今回の短文試用とは異なります。
Macで使うときは、モデル名よりランタイムの対応を先に確認
今回はApple Silicon向けのMLXパックを、mlx-vlm 0.7.8で読み込みました。公式カードでは同版以降のネイティブ対応を案内しています。確認時点のmlx-lm 0.32.0は、このパックのモデル種別を読み込めません。mlx-vlmとmlx-lmは名前が似ていますが、起動方法を入れ替えないことが大切です。小型モデル専用手順
公式デモはMacのほかLinux・Windows向けの経路も案内していますが、バックエンドと重み形式の組み合わせに条件があります。GGUFのPQ2_0・PTQ1_0にはPrismML側のllama.cppが必要で、Q2_0もモデル対応を含む新しい実装が前提です。「GGUFだから、手持ちのどのアプリでも開ける」とは考えないほうがよいです。対応表
日本語の既存記事にも、27BをMacで起動する際にランタイムやメモリでつまずいた検証記録があります。ただし、旧サイズ・以前の環境の結果を、新しい2B・4B・9Bの結果として扱うことはできません。今回の小型モデル向け手順を読み直す価値があります。
実際に試す入口:まず2Bを指定し、短文から始める
公式デモを使う場合、何も指定しない初期値は27Bです。小さいモデルを試すつもりなら、モデル指定を省かないようにします。以下は公式の小型モデル向け手順に沿う例です。インストーラー一式を今回そのまま実行したわけではなく、本記事の実測は後述の分離したPython環境で行いました。公式デモ
git clone https://github.com/PrismML-Eng/Bonsai-demo.gitcd Bonsai-demoexport BONSAI_FAMILY=bonsai2export BONSAI_MODEL=2B./setup.sh./scripts/run_mlx.sh --no-think -p "次の文を一文で要約してください。検証後に公開日を決めます。" -n 384短い分類・抽出では、まずthinkingをオフにして試すのが観察しやすい入口です。これは今回の試行方針であり、thinkingを使う価値がないという意味ではありません。公式手順ではモードごとにサンプリング設定が異なり、APIではモードを変えるだけで全設定が切り替わるわけではないと説明しています。
手元で再現する場合は、Apple Silicon用のPythonかも確かめてください。今回、最初に選ばれたPythonはx86_64用で、対応するMLXパッケージが見つからず導入に失敗しました。arm64版Python 3.12.13を別の仮想環境へ用意すると導入できました。既存の仕事用Pythonを上書きする必要はありません。
python3 -c "import platform; print(platform.machine())"日本語3件の実測:分類はできたが、2人目の作業が欠けた
2026年10月16日、Apple M2 Ultra・メモリ192GiB・macOS 27.0で、2BのMLX版を試しました。Python 3.12.13、mlx 0.32.4、mlx-vlm 0.7.8を使用。モデルの固定版は 1c6cbae21f8c38830ce337972b46fdae7b18eaaa です。モデルを事前に取得し、推論では外部APIを呼ばず、架空のテキストだけを入力しました。画像・音声・ツール実行は試していません。
設定はthinkingオフ、最大出力384トークン、temperature 0.7、top-p 0.8、top-k 20、min-p 0、presence penalty 1.5、履歴幅64、repetition penalty 1.0、乱数seed 42です。各入力は1回ずつで、正解率を推定できる件数ではありません。以下は入力と実際の出力を照合した判定です。
| 課題 | 観測した結果 | 判断 |
|---|---|---|
| 2人分の担当者・作業・期限をJSONへ抽出 | 佐藤さんの情報だけが出力され、鈴木さんの作業が消えた | 欠落あり。そのまま作業一覧へ登録しない |
| 請求書の再送依頼を分類 | 「請求」と答え、未記載の支払期日を補わなかった | この1件では分類できた |
| 未公開の画面について一文要約 | 検証後に公開日を決める趣旨は残ったが、「まだ公開していない」が明示されなかった | 状態の保持が必要な用途では不十分 |
抽出テストの全文は次の通りです。入力にない期限を作らないことに加え、入力にある人物や作業を落とさないことも確かめる必要がありました。
次の架空の社内メモから担当者・作業・期限を抽出してください。本文にない情報は不明とし、JSONだけを返してください。メモ:佐藤さんが見積書を確認します。期限は2026年10月20日です。鈴木さんは請求先を確認しますが、期限はまだ決まっていません。{ "担当者": "佐藤さん", "作業": "見積書を確認する", "期限": "2026年10月20日"}期待した内容は、佐藤さんの見積書確認と、期限を「不明」とした鈴木さんの請求先確認の両方です。出力されたJSONの文法が正しくても、仕事の情報が揃っているとは限りません。今回は指示を修正して再試験していないため、「配列で2件出す」と追加すれば直るとも断定しません。
3件の生成呼び出しにかかった時間は順に約3.91秒・0.26秒・0.12秒でした。モデルのダウンロードとロード時間は含まず、最初の呼び出しには初回処理の影響があり得ます。出力の長さも異なるので、この数字を一般的な速度比較には使いません。4B・9Bや元モデルとの比較、16GBなどのMacでの検証は未実施です。
価値を出しやすいのは、短い入力と確認できる出口
導入候補として考えやすいのは、短い問い合わせの仮分類、作業メモの下整理、定型文の言い換えなどです。これは今回の結果から考える試行案です。自動送信・確定処理を最初から任せず、入力と結果を並べて人が見直せる画面を出口にします。
| 試す仕事 | 先に用意する確認 | 採用を保留する例 |
|---|---|---|
| 問い合わせの仮分類 | 正解ラベルを付けた短文と、分類不能の例 | 迷った入力まで必ずどれかに分類する |
| 作業メモの下整理 | 担当者数、作業数、期限の有無を元文と照合 | 2人目が落ちてもJSONとしては成功する |
| 短い進捗要約 | 未実施・保留・未定という状態が残るかを照合 | 未公開なのに公開済みと読める要約になる |
本格導入の前には、モデルを小さくする効果と、修正にかかる時間を一緒に記録します。2Bで失敗した同じ入力を4B・9Bでも試し、欠落が減るかを比較すると、容量を増やす理由を説明しやすくなります。高いベンチマークの数字だけで、社内文書の精度を代用しないことが重要です。
今回のような少数試行を記録できる空の検証表CSVを用意しました。モデル・実行環境・入力・期待する事実・欠落・追加された事実を分けて残します。社外へ公開する表に実際の顧客情報を入れる必要はありません。
ローカル推論では従量API料金を使わずに動かせますが、端末・保存容量・電力・保守の負担は残ります。クラウドの入口に置いて情報を減らす設計も考えられるものの、今回の欠落結果を見る限り、匿名化や重要情報の除去を無確認で任せる用途には慎重な検証が必要です。
ローカルAIの利用条件を読む視点はGoogle Foresightの導入と検証にも通じます。小さく動くことを入口にし、必要な情報を保てることを採用条件にする。その順番でBonsai 2を試すと、軽量化が実際の仕事に役立つかを判断できます。