「出張の宿泊費はいくらまで使えますか」。AIが金額と引用番号を返しても、引用先が古い規定だったり、未承認の改訂案だったりすれば、そのまま業務には使えません。答えの横に出典があるだけでなく、元の文と、その文書が適用される条件まで確かめたいところです。
KnowNoteは、手元の資料へ質問し、引用をたどりながらノートを作るデスクトップアプリです。2026年9月28日23時34分(日本時間)に公開されたv1.5.0では、引用箇所の指定や検索対象の選択が強化されました。本稿は9月29日に公式資料と公開コードを確認した解説です。アプリや日本語モデルの実行は行っておらず、以下は実測結果ではなく検収のための手順です。v1.5.0の公式リリース
1. 検索できるだけでなく、答えを確かめやすくする更新
KnowNoteでは、取り込んだ資料から関連箇所を探し、選んだAIモデルへ質問を渡します。v1.5.0は新サービスの初公開ではありません。既存の資料検索を、回答の根拠を追える形へ広げた更新です。
| 追加・改善されたこと | 今回の検収で見る点 |
|---|---|
| 引用を文書内の細かな範囲へ結び付ける | 金額だけでなく、適用条件まで読めるか |
| 引用の不足・無効な引用・推論の印を集計する | 通知が何を意味するか区別できるか |
| 質問の検索対象を選ぶ | 正式版だけ、改訂案だけ、両方を使い分けられるか |
| 検索方法や対象を回答とともに記録する | 意図した資料から答えを探したか振り返れるか |
ほかに全文検索、検索方式の組み合わせ、フォルダー取り込み、外部のAIツールから資料を読むための機能も加わっています。今回は機能を一度に使い切ろうとせず、答えと根拠の対応を確認するところに絞ります。更新一覧
2. 引用が存在することと、回答が正しいことは別
新しい引用機能は、検索で見つけた文章から候補を作り、モデルがその候補を指定する設計です。文書の大きなまとまりだけを示す状態から、確認すべき箇所へ近づけます。ただし、資料の位置情報がなければ大きな範囲へ戻る場合があります。PDFの強調表示も、文の一部分ではなく、それを含む段落になる仕様です。引用範囲を扱う公式の変更説明
もう一つの機能は、回答の文に、実在する引用先へつながる番号があるかを調べるものです。引用先の文章が、その回答を意味の上で証明しているかまでは判定しません。 「8,000円」と書いた資料を引用しながら、AIが「10,000円」と答えていても、引用先が存在することだけでは誤りを取り除けません。引用状況の集計仕様
引用不足などは集計した通知として表示されます。各文に誤りの赤線が引かれる機能ではなく、通知が出ないことも正解の証明ではありません。読者が確かめるのは、引用を開けるか、その文章が回答を支えるか、規定の承認状態や適用日を取り違えていないか、の三点です。
3. 利用前に、AIの接続先と配布条件を確認する
v1.5.0にはWindows用とApple Silicon Mac用の配布物があり、GPL-3.0で公開されています。検索に使う小型モデルは初回に取得して手元で動かしますが、文章を生成するモデルは別途接続します。クラウドのAPIならその料金がかかり、ローカルモデルなら必要な機材を自分で用意します。配布物、接続条件
資料の保存や検索が手元でも、クラウドAIへ質問すれば、その質問や回答生成に使う資料の内容は設定した接続先へ送られます。「ローカル優先」という説明を、すべての処理が通信なしで完結する意味には取れません。今回の教材は架空の情報だけで作っています。
また、配布版は未署名で、Mac版は公証もされていません。起動時にOSの警告が出る条件であり、組織の端末では導入を認められない場合があります。本稿は警告を解除する操作を前提にせず、導入できる環境か確認してから試す構成です。Linux・Intel Mac向けの配布は案内されていません。公式の制限事項
画面の翻訳資源は英語と中国語で、日本語の画面は確認できませんでした。以下の日本語質問に答えられるかは、選ぶモデルと検索結果も含めて確かめます。v1.5.0の言語設定
4. 日付が新しい改訂案を、正式版と混ぜない教材
試験用に、架空の「青葉研究室」の国内出張規定を2本用意しました。Aは承認済みの正式版、Bは作成日だけが新しい未承認の案です。内容は意図的に食い違わせています。
| 項目 | 資料A:v1.0 | 資料B:v1.1改訂案 |
|---|---|---|
| 日付 | 8月1日改訂・施行 | 9月20日作成、10月1日施行予定 |
| 状態 | 承認済み | 未承認、施行日も未確定 |
| 日帰りの日当 | 2,000円 | 2,500円にする案 |
| 国内宿泊費 | 1泊税込8,000円まで | 1泊税込10,000円にする案 |
| 精算期限 | 出張した月の翌月5日 | 翌月10日にする案 |
Aは承認済みの後継版が施行されるまで有効、Bは別途承認完了の通知が必要、と明記しました。海外出張の金額はどちらにも書いていません。「日付の新しい文書を選ぶ」「国内の金額を海外にも当てはめる」といった、もっともらしい誤答を見つけるための条件です。
取り込みには、資料AのMarkdown版と資料BのMarkdown版を使います。人が読み比べるためのテキスト原本A・原本Bも同じ内容です。両形式を二重に取り込まず、モデルに渡すのはA・B各1本だけにします。Markdownの取り込みは、v1.5.0の公開コードで対応を確認しました。
5. 5問を別々の会話で試し、引用を開いて検収する
まず空の試験用ノートブックへA・Bの2本を追加します。取り込みが成功したことと、本文の金額・日付・見出しが読めることを確認してください。取り込み失敗を、その資料に情報がないことと取り違えないためです。
次に、質問欄の検索対象で使う資料を指定します。全資料、現在開いている資料、選択した資料という範囲を切り替えられます。資料を一つだけ選ぶ問いでは、送信前に選択状態を見直します。最後の選択を外すと全資料へ戻る仕様のため、「何も選んでいない=何も検索しない」ではありません。検索対象の選択画面
共通の依頼文は次のようにします。下表の期待条件や人用の回答表は、AIへ渡しません。
選択した資料だけを根拠に、日本語で答えてください。
金額、日付、承認状態の根拠に引用を付け、文書名と条番号も示してください。
資料にないことは「この資料では確認できない」としてください。
作成日と施行日、承認済みと未承認を区別し、外部の規則で補わないでください。
質問:〔以下の5問から1問だけ記入〕| 問い・検索対象 | 人が確かめる期待条件 |
|---|---|
| 1:Aのみ。国内宿泊費の上限と精算期限は? | 税込8,000円、翌月5日。Aの第2・3条を根拠にする |
| 2:Bのみ。日当と宿泊費の変更案、承認状態は? | 2,500円・税込10,000円という未承認の案 |
| 3:両方。9月29日時点で適用中と判断できる宿泊上限は? | この2資料ならAの税込8,000円。Bが未承認であることも確認 |
| 4:両方。10月1日から10,000円になると確定できる? | 確定できない。承認完了の通知が不足している |
| 5:両方。海外出張の日当はいくら? | この資料では金額を確認できない。国内分を流用しない |
5問はそれぞれ新しい会話で実施し、前の回答を次の問いに持ち込みません。回答後は引用番号を開き、元の条文と照合します。問3・4は、金額が合うだけでなく、正式版と案の状態を説明できるかまで見ます。詳しい依頼文、条番号、記録欄は人用の検収ガイドへまとめました。このガイドを資料と一緒に取り込まないでください。
6. 通知の有無と、業務で使えるかを分けて記録する
各問について「期待条件との一致」「引用先を開けたか」「引用文が回答内容を支えるか」を別々に残します。間違った回答に存在する引用が付いている場合は、最後の項目を不一致にします。通知が出なかったから合格、とはしません。
アプリの版、接続先とモデル名、選んだ資料、実行日時も記録します。失敗した問いだけ都合よく聞き直さず、最初の回答を残したうえで、次の試験として条件を変えます。5問を通過しても、長い規定や大量の資料、全社運用での正確さを証明したことにはなりません。
公式にも検索の評価資料がありますが、そこでは回答生成モデルを動かしていません。検索で関連箇所が見つかったという数値を、日本語回答の正答率として引用しないことが大切です。公式評価の対象範囲
KnowNote 1.5の使いどころは、人が根拠へ戻る作業を整理することです。まずこの2文書で、見つかった引用を読み直す手間と、回答を直す手間を記録します。AIに任せる役割を分けたい場合は、Orgletの調査・執筆・確認の設定例も参考になります。