夜間のデータ点検をAIに手伝ってほしい。でも、手元のパソコンを開いたままにする運用や、外部サービスの認証情報を一つずつ渡す構成には手間がかかります。が公開プレビューとして案内したは、この実行場所と外部ツールへの接続をまとめて提供するサービスです。新しいAIモデルの発表ではありません。
この記事では、モデルと実行環境の役割、一時停止して翌日に続ける仕組み、外部ツールへ渡す権限、料金の読み方を整理します。例にするのは「夜間に売上データを検査し、翌朝、人が確認する」仕事です。クラウドを契約する前に、手元で検査と費用の試算を動かせるサンプルも用意しました。
2026年9月23日に公式発表・ドキュメントを確認しています。配布コードの検査と計算はローカルで実行しました。DigitalOceanの有料環境は作成せず、実サービスでの接続、速度、日本語精度、請求額は測定していません。クラウド上の運用構成は設計提案です。
1. 公開プレビューで何が変わったのか
DigitalOceanは2026年9月22日の会社発表で、Managed Agentsの公開プレビューを案内しました。一方、公式の更新記録では、全ユーザー向けの提供開始は9月21日とされています。この記事では「9月22日に発表された公開プレビュー」と呼び、発表日と提供開始の記録を区別します。
核になるのは、との二つです。前者はエージェントがプログラムを実行し、ファイルや作業状態を持つ場所を用意します。後者は外部サービスの操作を見つけ、許可された範囲で呼び出す入口です。発表では16,000以上のツールに言及していますが、その全てが自分の契約ですぐに使えるという意味ではありません。必要な接続先と権限を設定して利用します。公式の機能説明
2. モデル・エージェント・実行環境を分けて考える
は入力を読んで次の応答を返すモデルです。モデルを呼び、必要に応じてファイルの読み書きや道具の操作を繰り返すのがエージェント側の処理です。は、その処理を実際に動かす場所になります。高性能なモデルを選んでも、作業ファイルの保存や外部サービスの権限設定が自動で決まるわけではありません。
| 層 | 夜間点検での役割 | 費用・管理の見どころ |
|---|---|---|
| モデル | 検査結果から担当者向けの説明案を作る | モデル呼び出しの料金は実行環境と別 |
| エージェント | 検査、結果の確認、説明案の作成を進める | どこまで自動で進めるかを決める |
| Harness Runtime | コードを実行し、作業ファイルと状態を保持する | 計算、メモリ、保存、停止・再開 |
| Action Gateway | 選んだ外部ツールへの呼び出しを管理する | 接続先の権限、承認、操作回数の料金 |
Harness Runtimeは、で隔離したを使います。既存のエージェントや独自の実行イメージを持ち込める設計ですが、業務の目的や入力データは利用者が用意します。「どのモデルを使うか」と「どこで動かし、何に触れさせるか」を別々に決めると、比較する項目が整理できます。公式アーキテクチャ
3. 一時停止・再開と、作業ファイルの残し方
は、実行環境とその作業状態・履歴をまとめて扱う単位です。Harness Runtimeでは、一時停止すると計算処理を止めながら作業ファイルや状態を保持し、再開して続きを実行できます。接続していた端末を閉じるだけでは一時停止になりません。端末との接続を切っても、クラウドの処理は続きます。接続解除と停止の違い
夜間処理の終了条件には「必要な出力を保存し、一時停止を確認した」まで含めます。公式資料では15分の無操作で自動停止する一方、処理の実行中には自動停止しないと説明されています。処理が動き続けるときの制限時間と、失敗を検知する仕組みは別に用意します。セッションの状態と停止条件
既存のセッションを操作する場合、から状態を確認できます。以下は公式の操作形式に沿った例です。YOUR_SESSION_NAMEを自分のセッション名に置き換えます。ここでは実行していません。再開すると計算処理の課金が再開し得るため、状態確認と操作を区別して使います。
doctl harness-runtime show YOUR_SESSION_NAME
# 処理が終わったセッションを一時停止し、状態を確認doctl harness-runtime pause YOUR_SESSION_NAMEdoctl harness-runtime show YOUR_SESSION_NAME
# 続きを動かすときだけ再開doctl harness-runtime resume YOUR_SESSION_NAME一時停止は、成果物の独立した保存先を用意することとは別です。削除する前に必要なレポートを取り出し、入力の日付と対応させて保管します。毎日の結果を同じ名前で上書きすると前日の出力を取り違えやすいため、業務日と入力の識別情報を付けて残す設計にします。公式のファイル転送手順
4. 実装案:夜間の売上データ点検を任せる
最初の題材として、日次の売上明細を点検し、異常の候補だけを翌朝の担当者へ示す構成を考えます。売上の修正や顧客への連絡まで含めず、取得済みデータの検査と説明案の保存を一つの仕事にします。この分け方なら、検査結果が正しいかを確かめてから自動化の範囲を広げられます。
| 順序 | 処理 | 残すもの |
|---|---|---|
| 1 | 外部の定期実行から、当日分のデータがそろったことを確認して開始 | 業務日、入力の保存場所、起動結果 |
| 2 | Harness Runtimeに検査用データを用意し、固定のコードで検査 | 入力の識別情報、検査ルールの版、検査結果 |
| 3 | 必要な場合だけモデルに検査結果を渡して説明案を作成 | 根拠となる行番号と、説明案 |
| 4 | 成果物を保存し、成功・失敗を外部側で記録して停止を確認 | 保存先、終了状態、停止確認 |
| 5 | 翌朝、担当者が対象の入力と照合する | 採用・誤検知・追加調査の記録 |
起動にはなど既存の定期実行を使い、停止中の実行環境そのものに次回起動を任せない構成にします。ファイルが届かなかった場合は検査プログラムが走れないので、データ到着と処理開始を外側から確かめる必要があります。監視の考え方はデータ基盤の監視にもつながります。
行数、必須項目、重複、金額の形式は、先に決めたルールをコードで検査できます。AIに向く仕事は「どの担当者に確認するとよさそうか」「前日の変更と関係があるか」といった説明や調査の補助です。判定可能な検査を全てモデルへ置き換える必要はありません。データ品質の考え方を基準に、機械的な検査と人が決める範囲を分けます。
5. クラウド契約前に、手元で検査を動かす
配布するの検査例は、売上IDと円単位の金額を持つを読みます。このサンプルの入力契約では、金額は0以上・12桁以内の整数で、返金明細は対象外です。実務では返金や取消の表現に合わせてルールを変更してください。モデルも外部サービスも呼ばず、元のファイルは変更しません。
検査コード check_sales.pyと架空の売上データ sample_sales.csvを同じフォルダに保存します。サンプルには金額の空欄、売上IDの重複、負の金額を意図的に入れています。実データを外部へ送る前に、このような既知の間違いを検出できるか確かめます。
python3 check_sales.py sample_sales.csv > report.jsonこのデータでは終了コードが1になります。これは検査対象に問題を見つけたという意味です。0は検査通過、2は読込失敗や形式不正です。後続処理は終了コードと出力内の状態を見て分岐させ、1や2を無視して成功扱いにしないようにします。保存先のreport.jsonも、定期実行では日付ごとの別名にしてください。
{ "rows": 5, "status": "needs_review", "issue_counts": { "INVALID_AMOUNT": 2, "DUPLICATE_ID": 1 }, "total_yen": null, "external_actions": []}結果はで返します。問題がある入力では、正しそうな売上合計を表示せずnullにしています。全件検査に通った場合だけ合計を返すため、不完全な集計が報告書へ紛れ込むのを防ぎます。配布コードは入力の識別情報と検査時刻、ルールの版、問題のあるレコード番号も記録し、元の顧客情報や自由文を出力へ複製しません。番号はヘッダーを1として数えています。
クラウドへ移す段階では、この検査を同じ入力で動かして結果を照合し、その後に説明案の生成を追加します。固定ルールで何も問題が見つからなければ、毎回モデルを呼ぶ必要があるかも検討できます。説明を加える場合も、検査結果を根拠にさせ、根拠のない原因を確定事項として書かせない運用にします。
6. Action Gatewayは、使う道具と権限を絞る
Action Gatewayはなどを通じて外部ツールを利用する入口です。必要な道具を探すaction_search、呼び出すaction_invoke、コードを実行するaction_codeが案内されています。検索で見つけたこと自体は操作の許可になりません。action_codeは呼び出しごとに新しい一時環境で動くため、ここへ保存したファイルを翌日も使えるとは想定しません。Gatewayの仕組み
夜間の点検で必要なのが当日の明細を読むことだけなら、元サービス側の認証情報も参照だけのにします。その上でGateway側に、選択できる道具と実行規則を設定します。Gatewayの規則は、接続先の認証情報が持つ権限そのものを狭めるものではありません。入力した指示文だけで操作を制限したつもりになるのも避けます。権限の境界
| 規則 | 動作 | この構成での設計例 |
|---|---|---|
| allow | Gatewayでの追加承認なしで実行 | 対象を絞った参照操作だけを許可 |
| ask | 実行前に人の承認が必要 | 確認済みレポートの送信などを別工程で扱う |
| deny | 呼び出しを拒否 | 売上の変更・削除など、この点検で不要な操作 |
無人処理の途中でaskが発生すると、人の対応が必要になります。毎晩の点検を自動で終えたいなら、参照とファイル生成に仕事を絞り、外部への送信やデータの変更は翌朝の別工程にするのが扱いやすい設計です。再実行しても同じレポートを二重に登録しないよう、業務日と入力の識別情報で処理済みを確認します。詳しくは再実行と冪等性を参照してください。
7. 料金は「実行環境だけ」と「全体」を分けて試算する
料金を読む際は、の計算処理、メモリ、保存、外部ツール、モデルの利用料を分けます。CPUの割当量はで表されます。メモリは、保存はの単価なので、単位を同じものとして扱わないようにします。以下は2026年9月23日に確認したHarness Runtime料金とAction Gateway料金です。
| 項目 | 確認した単価・扱い |
|---|---|
| CPU | 1 vCPU・1時間あたり0.044米ドル。現在の課金係数は直下の注記を確認 |
| メモリ | ピーク使用量1 GB・1時間あたり0.0095米ドル |
| 作業領域の保存 | ピーク使用量1 GiB・1か月あたり0.05米ドル |
| 標準の外部ツール呼び出し | 1,000回あたり0.10米ドル。有料検索やコード実行などは別料金 |
| その他 | モデル利用、外向き通信、保存する状態の複製、独自実行イメージなどは別に計上 |
発表記事はCPUの実使用量による課金を説明しています。一方、確認時の料金表脚注は「Active CPU billing is coming soon」と記載し、対応までは割り当てたvCPUの25%で課金するとしています。本記事の試算はこの暫定規則を使います。「モデルの応答待ちなら現在もCPU料金が必ずゼロ」とは扱いません。契約前に最新の料金表で差分を確認してください。
例として、毎日20分、30日間だけ停止せず動かすと仮定すると、合計は10時間です。2 vCPUを割り当て、稼働中のピークメモリを4 GB、作業領域を月を通して2 GiB、標準のツール呼び出しを600回と置きます。どれも実測値ではなく、費用の内訳を理解するための仮定です。待機している時間も、一時停止していなければこの稼働時間に含めます。
料金試算コード cost_estimate.pyは、小数の計算を行い、内訳と除外項目を出力します。料金表を取得したり、クラウドへ接続したりはしません。初期値は上の仮定なので、次のコマンドだけで計算できます。単価や暫定規則が変わった場合は、コードも更新してから利用してください。
python3 cost_estimate.py
# 停止せず30日間動かすという仮定と比較する場合python3 cost_estimate.py --active-hours 720| 内訳 | 月10時間という仮定での試算 |
|---|---|
| CPU | 10時間 × 2 vCPU × 25% × 0.044 = 0.22米ドル |
| メモリ | 10時間 × 4 GB × 0.0095 = 0.38米ドル |
| 作業領域 | 2 GiB × 1か月 × 0.05 = 0.10米ドル |
| 標準ツール | 600回 ÷ 1,000 × 0.10 = 0.06米ドル |
| この4項目だけの小計 | 0.76米ドル |
同じメモリ・保存・呼び出し回数の仮定で、停止しない時間だけを720時間へ変えると、この4項目の小計は43.36米ドルになります。ただし、自動停止や実際の利用量によって結果は変わります。どちらの試算にも、モデル推論、外向き通信、保存する状態の複製、独自実行イメージ、有料検索、税や換算費用は含めていません。停止方法を決める前に、安い単価だけで月額を判断しないための比較です。
8. 日本の業務へ入れる前に確認したい限界
公開プレビューなので、機能があることと、自社の処理を安定して任せられることは分けて確認します。まず架空のデータで1回動かし、入力の転送、検査、出力の回収、停止・再開を確かめます。本記事の検証では、このクラウド上の一連の操作までは実施していません。日本語での説明の正確さも、選ぶモデルと自社の題材で評価する必要があります。
確認時のHarness Runtime提供地域の表ではRIC1に対応の印がありました。利用可能なアカウントやサービスの組み合わせは、実際の管理画面と最新資料で確認してください。日本語のデータを扱えることと、データを国内だけで保存・処理できることは別です。転送する情報の範囲、接続先モデルのデータ取扱条件、業務上必要な保存場所を先に照合します。
公式の開始手順には、支払方法、前払残高、DigitalOceanへの接続権限、利用するモデルへのアクセスが必要と書かれています。また料金資料には、Harness RuntimeとAction Gatewayのそれぞれについてセッション単位・製品単位の支出上限がないと記されています。処理時間、呼び出し回数、繰り返し回数の上限をアプリケーション側でも決め、残高だけを業務の予算管理に使わない設計が必要です。
一時停止しても保存するデータの料金は残ります。さらに、停止したセッションもチームの利用枠に数えられます。保持する期間と削除する時期を決め、削除前には必要な成果物が別の保存先にあることを確認します。再開できる便利さを、いつまでも残してよい理由にしないことが運用上のポイントです。セッションの利用枠
9. 導入判断は、1回の点検から始める
このサービスを選ぶ理由になりやすいのは、モデルを呼べることだけではなく、コードの実行、作業状態の保持、外部ツールの権限管理をまとめて扱いたい場合です。既存の定期処理だけで十分に安定しているなら、移行によって減る作業と増える運用を比較してから決められます。
まず手元で検査ルールを固め、クラウドでは同じ入力・同じ結果になることを確認し、その後に説明案の生成を追加します。処理が止まる条件と費用の内訳まで含めて1回を完了できれば、毎日の仕事へ広げる判断がしやすくなります。続編は読者リアクションに応じて、実環境での停止・再開の検証や、外部サービスの参照権限を絞る手順を随時追加していきます。
よくある質問
- DigitalOcean Managed Agentsは新しいAIモデルですか?
- モデルそのものではなく、AIエージェントの実行環境と外部ツールへの接続・権限管理を提供するサービス群です。実行環境の料金とは別に、利用するモデルの料金も考える必要があります。
- 一時停止すれば全ての料金が止まりますか?
- 計算処理の料金は止まりますが、保持している作業領域や保存した状態などの料金は残ります。端末との接続を切るだけでは、クラウド側の一時停止にはなりません。
- CPUの実使用量による課金は、すでに使えますか?
- 2026年9月23日に確認した料金表脚注は、実CPU使用量による課金を今後対応とし、それまでは割当vCPUの25%で課金すると説明しています。発表文と料金表の違いがあるため、導入時に最新条件を確認してください。
- この記事のサンプルには有料アカウントが必要ですか?
- 配布するCSV検査と料金試算は、Pythonの標準ライブラリだけでローカル実行できます。クラウドへの接続やモデル呼び出しは行いません。記事中のdoctl操作例を実環境で使う場合は、別途アカウントや利用料金が必要です。