研究報告や論文の一段落を読みやすくしたい。でもAIに直してもらったら、引用が消えたり、数式の数字が変わったりするのは困る。未公開の原稿を外部のAIへ送らずに作業したい場面もあります。
Corollaryは、MacでLaTeX文書を編集する無料のオープンソースアプリです。LaTeXは、文章と数式・引用の指定を書いたソースからPDFを作る仕組み。Corollaryは編集画面とPDFプレビューに、Mac内蔵モデルによる文章編集と、変更を検査する処理を組み合わせます。
v0.1.0の公開は2026年11月2日3時59分44秒JST(11月1日18時59分44秒UTC)。本記事は同日朝、公開から約3時間後に確認した初期版の解説です。同名の別アプリと区別するため、配布元はcalvinyz/corollaryを確認してください。
v0.1.0のREADMEはAppleの公証をまだ受けていないと説明しています。この記事では配布アプリの起動制限を解除せず、公開コードの編集チェックだけを検証しました。GUIでの編集、内蔵モデルの文章品質、日本語PDFの作成、通信を遮断した状態での動作は未実測です。業務原稿へ導入する前に、配布元と所属先のルールを確認し、公開可能なサンプルのコピーで試してください。
ローカルLLMだけでなく、「変更を検査してから選ぶ」
v0.1.0の説明では、選択した文章に⌘Kで編集を指示し、差分を受け入れるか戻すかを選びます。AIによる編集前にはスナップショットも作られます。論文を丸ごと任せるより、段落単位で変更理由と差分を確認する使い方が合います。
| 段階 | 役割 | 確認すること |
|---|---|---|
| 文章の選択 | 直したい一段落だけを指定 | 数式・引用を含む範囲と、変更してよい文章を明確にする |
| モデルへの指示 | 短縮・文法修正・書き換えなどを提案 | モデルは文章を生成する。内容の正しさを保証しない |
| コードによる検査 | 引用キー・数式・波括弧や数式区切りなどをチェック | 検査対象の構造が保たれているかを見る |
| 差分とPDFの確認 | 人が採否を決め、再コンパイルする | 主張・否定・条件・単位・引用先の意味まで読む |
ローカルLLMは、モデルの処理を手元で行うという意味です。処理場所と回答の正確さは別の軸です。Corollaryの面白さは、モデルの提案に加えて、LaTeXの構造を確認する検査を挟んだ点にあります。
実測:引用・数式の変更は止めたが、意味の反転は通った
本誌はv0.1.0のvalidate.tsを取得し、公開コードのcheck関数をそのまま呼び出しました。環境はmacOS 27.0.1、Node.js v24.22.1。入力と候補文は本誌が作った4例で、LLMが生成した結果ではありません。GUI全体の保護や、日本語での精度を測った試験でもありません。
元の文は「We measured a gain of $x=2$ using \cite{demo2026}.」。demo2026は架空の引用キーです。実在する論文の引用ではありません。
| 候補文の変更 | check関数の結果 | 読み方 |
|---|---|---|
| 引用・数式を保ち、語順だけ変更 | 許可(ok: true) | 文章だけを直す例は通った |
| 引用キーdemo2026を削除 | 拒否(dropped demo2026) | 引用の脱落を検出した |
| 数式のx=2をx=3へ変更 | 拒否(changed / removed an equation) | 検査対象の数式の差を検出した |
| measuredをdid not measureに変更、引用・数式は維持 | 許可(ok: true) | 「測定した」が「測定していない」へ変わっても通った |
最後の例が実務上の要点です。引用キーや数式が同じでも、主張の意味は逆になります。検査を通ったから事実が正しい、引用先が実在する、論文の結論が保たれた、とは言えません。今回の4例は検査範囲を確かめる小さな試験であり、全パターンの検出率ではありません。
開発者の評価記録も、文章編集の構造チェックと、コンパイル・内容の正しさを分けています。合成した段落を使った小規模評価で、比較モデルの検証も未実施とされています。本誌の4例とは条件も目的も異なり、他のAIより正確だと結論づける材料にはしません。
使えるMac、料金、通信が必要になる場面
| 項目 | v0.1.0で確認した条件 |
|---|---|
| アプリ本体 | Apple silicon Mac、macOS 14以降。無料、Apache-2.0。モデルのライセンスは別。 |
| 標準の文章編集AI | Apple Intelligenceを有効にしたmacOS 26以降。Appleのオンデバイスモデルを利用。 |
| 別モデル | Ollama、または自分のAPIキーを使うクラウドモデルを選択可能。外部モデルの費用・条件は別。 |
| PDF生成 | TeX Liveとlatexmk。必要な環境・パッケージの取得には通信が必要。 |
| 画像から数式へ | 別のGLM-OCRモデルを手元で利用する構成。初回のモデル取得が必要。 |
| 共同編集・他OS | アプリ内の共同編集、Windows/Linux版などは今後の計画。現行機能と混同しない。 |
条件はREADMEとプライバシー説明に基づきます。Apple内蔵モデルの一般的な仕組みはAppleのFoundation Models説明でも確認できます。Corollaryで日本語の指示・文章・学会テンプレートが期待どおり動くかは、それぞれ別に試す必要があります。
「オフラインで使える」は、初回から通信不要という意味ではありません。コンパイルに関する開発記録では、必要なパッケージが手元にそろった後の利用と、初回の取得を分けています。画像から数式へ変換するモデルも、標準の文章編集モデルとは別です。
公開仕様では、Mac内のAppleモデルやローカルOllamaを使う場合、原稿を外部モデルへ送らず編集できます。一方、リモートモデルを選ぶと、選択した文章や、コンパイルエラーと周辺80行のソースがそのサーバーへ送られると説明されています。Ollamaという名前でも別のPC上で動かせば、そのPCへの送信になります。保存先が同期フォルダーかどうかも含め、原稿の行き先を確認します。
導入から試すなら、公開可能な一段落を使う
- 1公式リポジトリのReleasesでバージョンと配布元を確認する。v0.1.0は未公証との説明があるため、組織の承認条件を先に確認する。導入条件を満たせない場合は保留する。
- 2自分が作った公開可能なLaTeXプロジェクトを複製する。必要なTeX環境を準備し、AIを使う前のPDFを生成できることを確認する。既存プロジェクトの原本を使わない。
- 3モデルをMac内のAppleモデルにして、一段落を選択し⌘K。最初は文法修正など変更範囲の狭い指示にする。日本語の指示文は下の例を出発点に試す。
- 4差分で、引用キー・数式に加え、否定、比較、条件、数値の説明を読む。意図と違えばRejectし、採用した場合もPDFを再生成して確認する。
- 5日本語原稿では、文章編集の品質とPDF組版を分けて確認する。元のテンプレートが要求するエンジンやフォントがあるかを調べ、最初の短い文書で成功するまで移行を広げない。
これは公開仕様を踏まえた試用手順です。本誌は配布アプリでこの全手順を完走していません。日本語LaTeXのテンプレート互換性を保証する設定例ではなく、元の環境で正常に生成できたコピーを比較対象にする考え方です。
選択した一段落の文法と読みやすさだけを改善してください。事実、否定、条件、比較の向き、数量、単位を変えないでください。LaTeXのコマンド、数式、引用キー、参照キー、ラベルをそのまま保ってください。新しい参考文献や主張を追加せず、編集した段落だけを返してください。日本の仕事で価値が出やすい使い方
| 用途 | 小さく始める作業 | 人が残す確認 |
|---|---|---|
| 研究開発部門の英語報告 | 機密を含まない検証用の要約一段落を文法修正 | 因果関係や実験条件が変わっていないか |
| 学会向けの原稿 | 数式や引用を含む一段落を短くする | 文字数と意味の保持、投稿先のAI利用規定 |
| 技術教材・研修資料 | 説明文の語順を整え、PDFで確認 | 単位、前提、参照する式が正しいか |
上記は本誌の活用案です。外部への送信を避けやすい構成は利点ですが、すべての業務原稿を無条件で扱えるという意味ではありません。最初の評価では、修正前後を残し、「読みにくさが減ったか」と「意味を変えなかったか」を別々に判定すると、採用の判断がしやすくなります。
Corollary試用・文章差分の確認シートを用意しました。端末条件・モデルの場所・AI編集前のコンパイル結果・差分の確認を記録する空のシートです。原稿や認証情報を記入する必要はありません。
確認日:2026年11月2日JST。仕様と検証対象はv0.1.0、ソースコミット5b0efeb76c6de2952a2472ce4f2910876f9ee7f8。独自試験は編集チェック関数の4例のみです。LLMの生成、日本語品質、GUI操作、PDF生成、通信の実測は行っていません。新しい公開版で条件や挙動が変わる可能性があります。