前回、 は2つのデータが一緒に動く関係だと学びました。この回は、統計で最も間違えやすく、しかも間違えると結論が大きくずれる話をします。
それは、相関があっても、原因と結果の関係があるとは限らないということです。
1. アイスと水難事故
有名な例から入ります。アイスクリームの売上と、水難事故の件数を調べると、きれいな正の相関が出ます。アイスが売れる時期ほど、水の事故が多い。
ここで「アイスを売るのをやめれば事故が減る」と考えたら、それは間違いです。アイスと事故の両方に影響している、別のものがあるからです。
| 見えているもの | 実際に起きていること |
|---|---|
| アイスが売れる ↑ | 気温が高い → 冷たいものが欲しくなる |
| 水難事故が増える ↑ | 気温が高い → 水辺に行く人が増える |
この「両方に影響している別の要因」を と呼びます。アイスと事故は、気温という共通の原因を通じて、一緒に動いているだけでした。
相関を見つけたら、まず 「両方に影響していそうな第三のものはないか」 と考えてみてください。気温、季節、年齢、地域、所得 ── こうした要因は、いろいろなものに同時に影響します。
2. 相関があるときの4つの可能性
A と B に相関があるとき、考えられる説明は4つあります。どれなのかは、相関を見ただけでは分かりません。
| 可能性 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| A が B の原因 | 考えていたとおり | 勉強時間 → 点数 |
| B が A の原因(逆) | 原因と結果が逆 | 「本をよく読む子は頭が良い」か「頭が良いから本を読める」か |
| 共通の原因がある | 交絡 | アイスと水難事故(原因は気温) |
| たまたま | 偶然そう見えただけ | 件数が少ないときに起きやすい |
2行目の「逆」は見落とされやすい可能性です。時間の順序を確認すると、ある程度は切り分けられます。原因は結果より先に起きるはずだからです。
4行目も侮れません。件数が少ないと、関係のないもの同士でもたまたま相関が出ます。10人を調べて出た相関は、たまたまである可能性が十分にあります。次の節で、これがどれくらいの頻度で起きるかを実際に数えてみます。思っているよりずっとよく起きます。
3. たまたま強い相関が出ることを確かめる
「たまたま」がどれくらい起きるのか、実際に試してみましょう。まったく無関係な2つの数を作って、相関係数を計算します。それを何度も繰り返します。
import numpy as np
rng = np.random.default_rng(0)
for n in [10, 30, 100, 1000]: strong = 0 trials = 10000 for _ in range(trials): # まったく無関係な2つの数を作る a = rng.normal(size=n) b = rng.normal(size=n) r = np.corrcoef(a, b)[0, 1] # 相関係数の絶対値が 0.5 を超えたら「強い相関に見えた」と数える if abs(r) > 0.5: strong += 1 print(f"件数 {n:5d}: 無関係なのに |r|>0.5 になった割合 = {strong / trials:6.2%}")実行すると、件数が少ないほど、無関係なのに強い相関が出やすいことが分かります。10件なら十数パーセントの確率で起こります。1000件ではほぼ起こりません。
つまり、少ない件数で見つけた強い相関は、まず疑うべきだということです。これは EP.03 で扱った「散らばり」の話ともつながります。件数が少ないと、結果は大きく揺れます。
4. 因果を確かめる方法
では、本当に原因と結果の関係()があるかは、どう確かめるのでしょうか。基本は実験です。
- 1原因だと思うものだけを変える — それ以外の条件は揃える
- 2変えたグループと、変えないグループを作る — 比べる相手が要る
- 3どちらのグループに入るかは、くじ引きで決める — 偏りを防ぐ
- 4結果に差が出るかを見る — 差が出れば、原因である可能性が高い
3番目が重要です。自分で選ばせると偏ります。たとえば「新しい勉強法を試したい人」だけを集めると、そもそもやる気のある人が集まってしまい、勉強法の効果なのかやる気の効果なのか分からなくなります。これは次回扱う と同じ問題で、誰が入るかの決め方が結果を左右します。
くじ引きで分ければ、やる気も、もともとの成績も、両方のグループにだいたい同じくらい混ざります。だから差が出たとき、それは試した内容の差だと言えるようになります。他の要因を「揃える」のではなく「散らす」わけです。
5. 実験できないときは
現実には実験できないことも多くあります。気温を人が変えることはできませんし、倫理的にやってはいけない実験もあります(「タバコを吸わせるグループを作る」など)。
その場合は、次のような工夫で少しずつ確からしさを上げます。ただし実験ほど強い結論にはなりません。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 時間の順序を見る | 原因は結果より先に起きているか |
| 条件の近いもの同士を比べる | 年齢や地域が近い人同士で比べる |
| 量が増えると結果も増えるか | たくさんやるほど効果が大きいか |
| 他の説明を1つずつ潰す | 考えられる共通の原因を順に検討する |
| 別の場所でも同じか | 違う集団でも同じ結果になるか |
これらを積み重ねると、「原因である可能性が高い」とは言えるようになります。科学の多くの分野は、この積み重ねで結論を作っています。たとえば喫煙と病気の関係は、実験ができないにもかかわらず、こうした証拠を何十年も積み重ねることで確立されました。1つの調査で決まったわけではありません。
6. 日常で使える問い
ニュースや広告で「A の人は B になりやすい」という話を見たとき、次の問いを立ててみてください。それだけで、かなりの誤解を避けられます。
- 1逆ではないか — B だから A になったのでは
- 2共通の原因はないか — 両方に効いている第三の要因はないか
- 3何人を調べたのか — 少なければ、たまたまかもしれない
- 4比べる相手はいるのか — A でない人はどうだったのか
4番目が抜けている主張は非常に多いです。「この方法を使った人の80%が成功した」と言われても、使わなかった人が何%成功したかが分からなければ、効果があったのか判断できません。
相関があるとき、可能性は4つ ── そのとおり / 逆 / 共通の原因(交絡)/ たまたま。件数が少ないと、無関係でも強い相関が出る。因果を確かめる基本は実験で、くじ引きで分けるのが要点。実験できないときは工夫を積み重ねる。そして日常では、「比べる相手はいるのか」と問うだけで多くの誤解を避けられます。
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