見積一覧をAIに貼り付けて整理してもらった後、回答をExcelへ戻して、列幅や行の順番を直す。こうした「AIとの往復」に手間を感じる人に向けた新しい道具が MCP Docs です。表計算・文書・スライドの編集画面と、AIがファイルを操作する接続口を一つのアプリにまとめています。
MCP Docsは手元のファイルを編集するアプリですが、接続したAIサービスへ内容が渡る場合があります。完全オフラインのローカルLLM環境として検証したものではありません。Mac版はAppleの公証未取得、Windows版は未署名と公式に記載されています。まず導入が認められた端末と架空データで試す段階のソフトウェアです。
本稿の対象はdesktop-v0.2.28。公開日時は2026年10月26日01:47:44 UTC(日本時間10月26日10:47:44)で、同日16時の調査基準から約5時間です。この版ではFinder/File Explorerでファイルの保存場所を表示する操作と、別アプリへのファイルのドラッグが追加されました。アプリ全体がこの日に初公開されたという意味ではありません。
何が新しい? 人とAIが同じファイルを扱うオフィスツール
MCPは、AIに外部の道具を使わせるための接続方式です。MCP Docsでは、アプリの編集機能をAIから呼び出せるようにしています。ローカルMCPの実装には、AIが開いたファイルを画面に表示し、ファイルIDを省略した操作では画面で開いているファイルを対象にする仕組みがあります。
読者にとっての違いは、AIの返答が文章だけで終わらず、表や文書の変更になることです。ただし、画面に現れた変更を人が確認できることと、計算や内容が正しいことは別です。売上や見積金額を扱うなら、変更前後の行数・合計・欠損を確認する工程までセットにします。
| 使い方 | 何をするか | 初めて試す用途 |
|---|---|---|
| アプリ内のAssistant | 文書の横でAIへ依頼し、編集結果を確認する | 開いている表の項目を説明し、整理案を出す |
| 外部AIからMCP接続 | Claude CodeやCodexなどからアプリの操作を呼び出す | 対象ファイルを1つ指定し、決めた範囲だけ編集する |
| 0.2.28のファイル操作 | Finder/File Explorerで保存場所を表示する。ファイルを他アプリへドラッグする | 確認済みの成果物を別の作業へ渡す |
内蔵Assistantと外部接続の案内は版を固定したREADME、今回の追加操作はリリースノートで確認できます。ドラッグは見た目のカードを渡すだけでなく、実際のファイルを渡す設計です。送信や共有を伴うアプリへ渡す場合は、確認済みの成果物を選びます。
日本の仕事なら、見積一覧・議事録・説明資料から試せる
| 業務の困りごと | 依頼する作業の例 | 人が確認する点 |
|---|---|---|
| 見積一覧の整理に時間がかかる | 未確認の金額を抽出し、状態別に整理する。勝手に空欄を埋めない | 同じ顧客でも別案件を消していないか。金額と案件IDの対応 |
| 議事録から行動を拾い直している | 決定事項・担当・期限を表へまとめる。不明な担当や期限は不明のまま残す | 発言にない約束や期限が追加されていないか |
| 提案資料の表現を揃えたい | 指定した数枚だけ、見出しや用語の表記を整える | 数値・単位・引用・レイアウトが保持されているか |
これらは編集部が考えた導入案で、製品で作業を完遂した実測例ではありません。最初は「全部きれいにして」より、「変更してよいセル・行・文書の範囲」と「変えてはいけない事実」を指定すると、結果を検査しやすくなります。AIが出した提案を採用するかどうかも、人が決める工程として残します。
対応環境と費用:無料の本体、別に必要なAI利用
| 項目 | 0.2.28で確認した条件 |
|---|---|
| 配布アプリ | macOSのApple Silicon向けzip、Windows x64向けインストーラー。Intel Macはこのビルドの対象外 |
| 本体のライセンス | MIT。AIサービスの利用料金やクラウド版の条件とは別 |
| AIへの接続 | 内蔵AssistantはAPIキーを使う方式などを案内。外部エージェントはMCPで接続 |
| 日本語 | 日本語UIの正式対応と、日本語指示によるAI編集の品質は未確認。本稿では日本語CSVの限定した処理を検証 |
| Office形式 | Excel・PowerPoint・Word形式を読み書きする設計。ただし、互換性の制約を確認する必要がある |
| 配布時の条件 | Mac版はAppleの公証未取得、Windows版は未署名。組織の導入基準に適合するか確認 |
配布条件はリリースページ、本体の権利条件はMITライセンスに基づきます。内蔵AssistantのAPI方式はAnthropic・OpenAI・OpenRouterを案内し、利用するアカウントへ従量課金されます。既存のコーディングエージェントを使う方式でも、契約や利用上限がなくなるわけではありません。クラウド版の料金は今回確認できていないため、本稿ではローカルのファイル編集に対象を絞ります。
「Macで動く」「保存先が自分のPC」「LLMの推論もPCだけで完結する」は別の条件です。社内の資料を使う前に、接続するAIの送信先と利用条件を確認します。日本語のデータを読み込めたとしても、日本語での要約・分類・推論まで正確だと確認できたことにはなりません。
ファイル互換性で見落としたくないこと
ファイル保存の実装を見ると、Officeファイルはアプリ内部のデータへ読み込み、保存時にOffice形式へ書き出す構成です。元ファイルにあるすべての機能を、そのまま保持する方式とは限りません。初めて上書きする際にコピーを残す処理もありますが、業務用原本のバックアップの代わりとは考えないでください。
たとえばWord読み込みの実装は、脚注・コメント・フィールドなど、取り込めず警告対象となる要素を説明しています。契約書や詳細な注釈付き文書を最初の題材にするより、単純な表や短い文書のコピーから試す方が、差分を把握しやすくなります。
| 確認する対象 | 試用で見ること |
|---|---|
| Excel | 数式・表示形式・グラフ・行列の対応が、保存後も目的どおりか |
| PowerPoint | 文字の位置、改行、図形、画像、ページ構成が保持されるか |
| Word | 脚注やコメントなど、失われると困る情報の有無。警告内容と保存後の文書 |
| CSV | 値だけでよいか。装飾や複数シートを追加して別形式へ変わらないか |
| 削除したファイル | アプリ内の削除先を確認。OS標準のゴミ箱と同じだと思い込まない |
CSVは、値をカンマで区切ったテキストです。太字や複数シートを保存する形式ではありません。CSVの判定コードも、セル装飾やシート追加を「CSVでは保持できない内容」として検出します。AIに見栄えの改善を頼んだ結果、ファイル形式が変わる可能性も確認ポイントです。
最初の試し方:架空の見積4件で、読み取り→変更→確認
- 1公式の0.2.28リリースで対応端末と配布条件を確認する。業務端末の導入基準に適合しない場合は、原本を持ち込んで進めない。
- 2検証専用フォルダーを作り、下の架空CSVを保存する。普段の書類フォルダー全体を最初の対象にしない。
- 3導入できる端末でMCP Docsを起動し、検証用フォルダーのCSVを開く。表示された案件ID・金額・空欄が元データと一致するか確認する。
- 4接続方式を一つ選ぶ。内蔵AssistantならSettingsでAI設定を確認する。外部接続ならFile → Connect an Agent (MCP)…の案内を使い、接続対象を確認して許可する。
- 5まず下の日本語依頼文で読み取りだけを依頼する。期待値と一致したら、コピーに対して並べ替えなど小さな変更を一つだけ追加する。
- 6保存後にファイルを開き直す。案件ID、空欄、行数、金額を再確認し、別の表計算ソフトでも必要な情報が残っているか調べる。
公式はnpxによる導入も案内していますが、これはアプリ取得だけでなくClaude Code/Codex向けプラグインの導入を提案する処理も含みます。既存環境へ何を追加するかを確認してください。外部接続はアプリが起動している間の http://127.0.0.1:39217/mcp を使い、クライアントごとの許可を求める設計です。具体的な接続操作は対象版のREADMEとアプリの案内を合わせて確認します。
次のCSVはすべて架空です。合計は入力済み金額だけで320,000円、金額未確認は1件です。架空商事は2行ありますが、A001とA004は別案件なので削除しません。「確認中」は3件、「確定」は1件です。
案件ID,顧客名,見積額,状態,備考A001,架空商事,120000,確認中,"条件A,B"A002,架空工業,80000,確定,A003,架空企画,,確認中,金額未確認A004,架空商事,120000,確認中,別案件開いている検証用の見積CSVだけを読み取って、日本語で確認結果を出してください。この段階ではファイルの編集・保存・削除・外部への共有はしないでください。
1. 見出しを除く案件数を数える。2. 入力済みの見積額だけを合計し、金額が空欄の案件IDを挙げる。3. 状態別の件数を示す。4. 同じ顧客名でも案件IDが違えば別案件として扱う。重複削除しない。5. 空欄の金額や状態を推測しない。読めないセルは未確認とする。6. 並べ替えるならどうするか、実行せず提案する。
最後に、確認したファイル名・元の案件ID一覧・未確認の項目を示してください。架空CSVをダウンロード/日本語の依頼文をダウンロード。これは試用教材で、AIの回答例を実測結果として示したものではありません。変更を依頼する場合は、対象をコピーしたファイルへ切り替え、「状態で並べ替えるが各行の値は変えない」など、検査できる一操作に絞ります。
編集部で確認できた範囲と、まだ確認していないこと
編集部はdesktop-v0.2.28のソース、コミット 1a7088e を固定し、CSVの純粋な変換・判定関数をNode.js 23.11.0で実行しました。上の日本語教材を使った往復変換など、8件の確認が成功しています。外部AIへの推論依頼は行っていません。
| 確認したこと | 結果 |
|---|---|
| 日本語と、引用符で囲ったカンマ入りセル | 値を保持 |
| CSV→内部の表→CSV | 教材の文字列と一致 |
| 金額の空欄・同じ顧客の別案件 | 空欄と2件の案件を保持 |
| 値だけの表 | CSV保存可能という判定 |
| 太字・複数シート | CSVでは保存できないという判定を確認 |
| BOM付き・CRLF改行 | 往復変換で保持 |
太字や複数シートの確認は、意図的にCSVの限界を越える条件を与えたものです。保存処理が実際に停止したことや、画面で変換の確認が出たことまで検証したものではありません。今回確かめたのは、限定した入力に対する関数の出力です。
アプリのインストール・起動、AIによる日本語編集、.xlsx/.pptx/.docxの実ファイルの往復保存、表示崩れ、処理速度は未実測です。また開発用のpackage.jsonはNode.js 24以上を指定しています。今回のNode.js 23での部分的な関数実行を、アプリ全体の動作条件として使わないでください。
導入判断では、AIの待ち時間だけでなく、元ファイルとの照合と手直しにかかった時間を測ります。10分で表ができても15分の修正が必要なら、その業務では期待ほどの効果がないかもしれません。まずこの4件で「空欄を埋めない」「別案件を消さない」を守れるか確かめ、それから実務に近いコピーへ進むのが現実的です。
確認日:2026年10月26日(日本時間)。新しい版の情報は公式リリース一覧を確認してください。AIに作業を渡す際の境界については、JuniorでPR・CIの待ち仕事を整理する記事でも、実行範囲と人が確認する工程を扱っています。