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EP.42Open Data 13分公開: 2026-09-01

政府統計をどう探すか ── 使い分けと、つまずきどころ

統計は揃っているのに、目的のものが見つからない。探し方、粒度の選び方、時系列で比べるときの落とし穴を、実務の観点で整理します。

#オープンデータ#統計#e-Stat#実務
執筆 / 監修
松尾 亮合同会社ふくふく 代表社員

データ基盤・データパイプライン構築 / BI / 生成 AI 活用支援を専門とするエンジニア (28 年)。 本記事は AI 利用ポリシーに基づき、生成 AI の補助で執筆 → 人間が監修・編集して公開しています。

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この連載では、これまで個別の統計を扱ってきました。この回は横断的な話として、どう探し、どう選び、何につまずくかを整理します。 の中でも、政府統計は最も体系が整っている領域ですが、体系が大きいぶん、目的のものを見つけるのが難しいという性質があります。

統計そのものは充実しています。問題は、目的のものにたどり着けるかです。

1. 探し方の順序

「◯◯の統計」という名前で探しても見つからないことがあります。統計は調査の単位で作られているためです。

  1. 1どの調査で扱われそうかを考える — 統計名ではなく調査名
  2. 2その調査の概要を読む — 何を、どの粒度で、いつ調べているか
  3. 3公表されている表の一覧を見る — 目的に近いものを探す
  4. 4同じ内容が別の調査にもないか確認 — 粒度や頻度が違う場合がある
  5. 5定義を確認する — 用語の意味が想定と違うことがある

5番目を飛ばさないでください。同じ言葉でも、統計上の定義が日常の意味と違うことがあります。「世帯」「事業所」「従業者」といった基本的な用語ほど、厳密な定義があります。

定義の違いは、比較で顕在化する

1つの統計だけを見ている間は問題になりません。別の統計と比べたとき、あるいは自社のデータと突き合わせたときに、数字が合わずに発覚します。先に定義を確認しておけば、その調査自体を避けられます。

2. 粒度の選び方

同じ内容でも、公表されている粒度が調査によって違います。細かいほど良いとは限りません。

粒度と、その特性
粒度利点注意点
全国確実に存在する地域差が見えない
都道府県多くの調査で公表県内の差が見えない
市区町村実務で使いやすい公表されない調査もある
町丁目・メッシュ詳細な分析ができる秘匿で欠測が増える

最下行の秘匿が実務でつまずく箇所です。件数が少ない区分は、個人や事業所が特定されうるため公表されません。細かい粒度を選ぶほど、欠測が増えます

そして、秘匿された値を0として扱ってはいけません。「公表されていない」と「0である」はまったく違います。EP.40 で扱った「無い=存在しないではない」と同じ構造で、この連載を通じて何度も出てくる論点です。 を確認する習慣が、ここでも効きます。

秘匿値を、0と区別して扱う
Python
import numpy as npimport pandas as pd
# 統計データによくある記号# "-" : 該当なし(実質0)# "X" : 秘匿(値は存在するが公表されない)# "...": 調査していないSPECIAL = {    "-": 0.0,            # 該当なしは0として扱ってよい    "X": np.nan,         # 秘匿は不明。0にしてはいけない    "...": np.nan,       # 未調査も不明    "": np.nan,}

def parse_stat_value(v):    """統計の値を数値にする。記号は意味を区別して扱う。"""    s = str(v).strip()    if s in SPECIAL:        return SPECIAL[s]    try:        return float(s.replace(",", ""))    except ValueError:        return np.nan

def summarize_missing(series: pd.Series) -> None:    """欠測の内訳を出す。0との区別を明示する。"""    raw = series.astype(str).str.strip()    print(f"  全体          : {len(raw):,} 件")    print(f"  該当なし(-)   : {(raw == '-').sum():,} 件 → 0 として扱う")    print(f"  秘匿(X)       : {(raw == 'X').sum():,} 件 → **不明**(0ではない)")    print(f"  未調査(...)   : {(raw == '...').sum():,} 件 → 不明")

# 秘匿が多い場合、その粒度での集計は信頼できない

記号の意味を区別するのが要点です。まとめて0にすると、秘匿された分だけ実態より小さい合計になります。しかも、秘匿は件数の少ない区分に集中するため、偏った過小評価になります。

3. 時系列で比べるとき

年度をまたいで比べるときが、最もつまずきやすい。数字が繋がらない理由は、実態の変化とは限りません。

時系列で繋がらない理由
繋がらない理由確認方法
調査方法が変わった調査の概要で改定の履歴を確認
区分の定義が変わった分類の改定時期を確認
市区町村が合併した境界の変更履歴を確認
調査の対象範囲が変わった対象の定義を比較
公表値が改定された確報・改定値の有無を確認

3行目は地域別の分析で必ず問題になります。合併で市区町村が変わると、同じ名前でも範囲が違います。10年前と今を比べるなら、境界の変更を考慮した対応表が必要です。

分類の改定は静かに起きる

産業分類や職業分類は、定期的に改定されます。改定の前後で、同じ区分名が違う範囲を指すことがあります。「この業種が急増した」という発見が、実は分類が変わっただけということが起こります。

4. 自社のデータと突き合わせる

実務では、統計を自社のデータと組み合わせる場面が多い。ここでも定義の差が効いてきます。

  • 期間の定義 — 年度か暦年か。締め日はいつか
  • 対象の定義 — 「事業所」と「拠点」は同じか
  • 集計の単位 — 「世帯」と「顧客」は対応するか
  • 地域の割り当て — 住所の表記、境界の扱い(EP.41)
  • 時点 — 統計の基準日と、自社データの時点

1番目は単純ですが見落とされます。統計が年度(4月〜3月)で、自社が暦年なら、そのまま比べられません。3か月ずれた比較になります。しかも数字としては両方とも正しいので、突き合わせても誤りに気づきにくい。

5番目も重要です。統計には基準日があり、その時点の状態を表しています。公表は数か月〜1年後になることが多い。「最新の統計」が1年前の状態ということは珍しくありません。

5. 使う前のチェック

統計を使う前に確認する項目を、まとめます。これを習慣にすると、後戻りが減ります

使う前のチェック項目
確認項目なぜ必要か
基準日と公表日いつ時点の状態か
調査の対象範囲何が含まれ、何が除かれるか
用語の定義日常の意味と違うことがある
粒度と秘匿の有無使いたい細かさで得られるか
改定の履歴時系列で比較できるか
利用条件出典表示の要件など

最下行も忘れないでください。公的統計の多くは自由に利用できますが、出典の表示が求められることが一般的です。加工した場合は、加工したことも明示するよう定められていることがあります。

6. 記録に残す

最後に、使った統計を記録に残す話です。数か月後に「この数字はどこから?」と問われて答えられるように。

  1. 1調査名と表番号 — 統計名だけでは特定できない
  2. 2基準日 — いつ時点のデータか
  3. 3取得日 — 改定されている可能性があるため
  4. 4粒度と対象範囲 — どこまでを含むか
  5. 5加工の内容 — 集計、按分、補完をしたか

3番目が意外に重要です。統計は改定されることがあります。同じ表でも、取得した時期によって値が違うことがある。取得日を残しておけば、後から差が出たときに原因を特定できます

この記録は、レガシー再生の現場 EP.06前処理の現場 EP.21 で扱った「変換したことを記録に残す」と同じ考え方です。元に戻れる状態を保つということです。

ここまでのまとめ

探すときは統計名ではなく調査名から。用語の定義は日常の意味と違うことがあり、比較で顕在化する。細かい粒度ほど秘匿による欠測が増え秘匿を0として扱ってはいけない。時系列で繋がらないのは、調査方法・分類・境界の変更が原因のことが多い。そして調査名・表番号・基準日・取得日を記録に残してください。

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