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EP.03Space Science対象: 中1以上 11分公開:

ロケットの燃料はどう進化した?――火薬、水素、メタン、未来の推進薬

新しいロケットには、必ず新しい燃料が入っているのでしょうか。実は、昔から知られる物質を使いながら、エンジン、製造方法、運用を改良する進歩もあります。何を燃やすかだけでなく、何を運び、どこで使うかを考えると、燃料の選択が見えてきます。

#宇宙科学#MMX#探究学習
執筆 / 監修
松尾 亮合同会社ふくふく 代表社員

データ基盤・データパイプライン構築 / BI / 生成 AI 活用支援を専門とするエンジニア (28 年)。 本記事は AI 利用ポリシーに基づき、生成 AI の補助で執筆 → 人間が監修・編集して公開しています。

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新しいロケットには、必ず新しい燃料が入っているのでしょうか。実は、昔から知られる物質を使いながら、エンジン、製造方法、運用を改良する進歩もあります。何を燃やすかだけでなく、何を運び、どこで使うかを考えると、燃料の選択が見えてきます。

「よく燃える」だけでは選べない

ロケットの推進薬には、同時には満たしにくい要求があります。少ない質量で大きく速度を変えたい。小さなタンクに収めたい。長く保存したい。点火を確実にしたい。作業する人の負担を減らしたい。これらを一つの物質で完全に満たすのは難しいため、用途ごとに選択が変わります。

性能を表す言葉に「比推力」があります。推進薬を消費する速さに対して、どれほどの推力を得られるかを表す指標です。単位は秒ですが、エンジンを何秒燃やせるかを直接表す数字ではありません。高いほど同じ質量の推進薬を有効に使える目安になります。ただし、タンクや電源なども含めた機体全体が軽くなるとは限りません。

料理の食材が小さくても、それを調理する道具が巨大なら、持ち運ぶ荷物は増えます。推進系でも、推進薬の成績と装置全体の成績を分けて考える必要があります。ロケットの種類を比べるときに、比推力という一つの数字だけで勝敗を決めない理由です。参考:NASA・推進と力学

火薬から液体へ。その後は枝分かれした

初期のロケットには火薬が使われました。現代の固体ロケットも、あらかじめ固めた推進薬を使いますが、昔の火薬をそのまま巨大化したものではありません。材料、粒の配置、結びつける成分、内部形状、容器の強さまで設計します。

1926年3月16日、ロバート・ゴダードはガソリンと液体酸素を使うロケットの飛行に成功しました。液体を別々のタンクに入れ、燃焼室へ送る仕組みが、実際に空を飛んだのです。2026年はその100年後に当たります。出典:NASA・液体ロケットの歴史

その後、ケロシン、水素、長期保存に向く推進薬など、さまざまな選択が発展しました。固体式が消えて液体式になり、液体式が消えてメタンになる、という一本道ではありません。地上で強く押す役目と、宇宙で何年も後に小さく噴く役目では、必要な性質が違います。

推進薬は、使い道で選ぶ。
NASA・JAXA・ESAおよび開発企業の本文出典を整理。固体は中心孔のある例で、全製品が同じ形ではない。研究・実証・実運用の段階は本文の表で区別する。 図を拡大して読む

固体式は、今も重要な選択肢

固体式は燃料と酸化剤などを一体にした推進薬を搭載します。燃焼室へ液体を送り続ける複雑な供給装置が要らず、保存や打ち上げ準備に利点があります。一方、一般的な固体モータは、点火後に液体式の弁のように流れを止めて、何度も再着火する使い方が苦手です。推力の変化は主に、燃える表面の形や推進薬の性質で事前に設計します。出典:JAXA・固体と液体の違い

燃焼を細かく調整しにくいことと、飛ぶ方向を全く制御できないことは違います。ノズルの向きなどを制御する方式があります。イプシロンでは小型の液体推進系を加え、最後の軌道投入を細かく調整する構成も使われました。固体と液体は競争するだけでなく、一つの機体の中で補い合います。出典:イプシロンの構成

イプシロンSについては、2023年と2024年の第2段モータ試験で燃焼異常が発生しました。その後、2026年7月23日に実施されたM-35aの地上燃焼試験は、JAXAが正常終了を発表しています。速報の燃焼時間は129.9秒です。これは地上試験の結果であり、ロケット全体の飛行成功や通常運用の開始を意味しません。試験履歴・2026年の試験結果

液体水素、ケロシン、メタンを比べる

燃料と酸化剤選ぶ理由負担になること
液体水素+液体酸素高い比推力を得やすい。H3の液体エンジンに使用水素の密度が低くタンクが大きい。非常に低い温度での管理が必要
ケロシン+液体酸素燃料を比較的小さな体積に収めやすい。FalconのMerlinに使用炭素の堆積などを含め、冷却や再使用時の状態を考える必要がある
液体メタン+液体酸素水素より高い燃料密度。メタンを主成分とするLNGは貯蔵・冷却にも特徴がある低温での貯蔵が必要。機体全体での得失を評価する必要がある

水素の低密度は、「同じ1kgでも、入れ物の中で大きな体積を占める」ということです。同じ体積で比べるか、同じ質量で比べるかによって見え方が変わります。エンジンの性能を上げても、そのために容器が重く大きくなれば、別の負担が生じます。燃料の選択は、この兼ね合いを考える設計です。JAXA・LNG推進系・SpaceX・Merlinの仕様

もう少し具体的に見ると、メタンを主成分とするLNGの研究では、冷たい燃料を燃焼室の壁の内部へ通し、壁を冷やすと同時に燃料を温めて燃えやすくする工夫があります。JAXAは2022年の解説で、水素との貯蔵性の違い、ケロシンとの比推力の違い、燃焼室の冷却と燃料の加熱の両立を説明しています。単に燃料を交換するだけで性能が上がるのではなく、燃料の性質に合う設計が必要です。LNGは混合物で、組成をそろえたメタンと完全に同一ではない点にも注意しましょう。出典:JAXA・LNG推進系の研究(2022年)

液体式ならすべて何回でも再着火できるわけではありません。点火装置、推進薬の状態、電力、温度などに対応した設計が必要です。「物質の性質」と「そのエンジンが備える機能」を混同しないことが大切です。

新しい方向1:燃料の作り方を変える

バイオメタンは、メタンという新物質を発明したわけではありません。原料と製造経路を変える取り組みです。北海道のインターステラテクノロジズは、家畜ふん尿由来の液化バイオメタンを用いたZERO用エンジンの燃焼器単体試験成功を2023年に発表しました。ふんを直接燃やすのではなく、発生したガスからメタンを精製して使います。出典:開発企業の発表

地域で出る資源を宇宙輸送につなげる発想は興味深いものです。ただし「生物由来だから環境負荷ゼロ」とは言えません。精製や液化に必要なエネルギー、輸送、途中でのメタン漏出まで含めて考える必要があります。性能を変える進歩と、供給の仕方を変える進歩は、別々に評価します。

新しい方向2:低毒性の推進薬

衛星などの姿勢・軌道制御では、ヒドラジンの取り扱い負担を減らす代替推進薬が研究されてきました。米国のASCENTは、旧称AF-M315Eと呼ばれた推進薬で、NASAのGPIMで宇宙実証が行われています。欧州ではLMP-103Sなどが知られています。これらは主に宇宙機用推進系の話で、H3の主エンジンへそのまま入れる燃料ではありません。NASA・GPIMの実証・ESA・材料適合性の試験

「グリーン推進薬」という呼び名は、無害を意味しません。毒性を減らしても、反応性、燃焼時の温度、貯蔵容器との相性などは残ります。作業する人の負担が減ることは大きな進歩ですが、家庭で扱えるという意味でもありません。記事を読むときは、何と比べて、どの負担が減ったのかを確かめましょう。

新しい方向3:固体を作りやすくする、燃やし方を変える

JAXAは固体ロケットの製造を簡素化するために、低融点熱可塑性推進薬LTPを開発し、その活用を目指す企業も生まれています。熱可塑性とは、加熱によって形を変えやすくなる性質です。高性能化だけでなく、加工しやすさや製造工程を改善する研究です。イプシロンSへの採用を意味するものではありません。出典:JAXAの企業紹介

また、固体燃料へ別のタンクから酸化剤を送る「ハイブリッドロケット」も研究されています。酸化剤の供給を調整できる利点がありますが、燃料の表面をどのように燃やして十分な推力を得るかが課題になります。JAXAの研究紹介では、端面から燃焼させる方式が説明されています。これは固体と液体の長所を無条件に全部得られる魔法ではなく、新しい構造で課題を解こうとする研究です。出典:端面燃焼式ハイブリッドロケット

新しい方向4:「燃料」と「噴き出す物質」を分ける

水を使う推進にも研究があります。水を温めて蒸気を噴き出す方式や、電気分解して水素と酸素にして使う方式などです。水は貯蔵や取り扱いの面で利点がありますが、加熱や分解には外からエネルギーを与えます。水そのものが無限にエネルギーを生むのではありません。出典:ESA・水推進の研究

電気推進では、電力を使って物質を速く噴き出します。キセノンの代替候補としてヨウ素を使う研究などがあり、保存の方法、費用、装置の材料との相性が検討されています。物質が担うのは「後ろへ飛び出す役」で、エネルギーは太陽電池などから得る電力が担います。出典:ESA・推進研究の動向

何を噴き出し、何で加速する?
形状・配管・噴流は原理図で、特定エンジンの設計図ではない。電気推進はイオンなどを電力で加速する例。水の電気分解の電力供給は外部に必要。酸化剤を機上に持つため、燃焼に外気の酸素は不要。 図を拡大して読む

こうした方式には、宇宙で使われたものも、地上試験や研究の段階にあるものもあります。同じ「未来の燃料」という箱に入れず、何が実証済みかを確かめることが大切です。新しい推進薬の価値は、名前の新しさより、「それを使うことで、これまで難しかったどんな探査ができるか」にあります。

どこまで実証された?――資料の年と到達段階を見る

以下は、本文で紹介した個別の開発例について、引用資料で確認できる段階です。方式全体の2026年現在の最高到達点を示すランキングではありません。古い発表の後にも開発が進んでいる可能性があり、実証年と本稿の確認日は別です。

開発例・資料確認できる段階変えたいこと/まだ別に確かめること
バイオメタン/IST・2023年発表ZERO用燃焼器単体の地上試験燃料の供給経路を変える。ロケット全体の飛行成功とは別
ASCENT/NASA・GPIMの2020年報告宇宙での推進系実証ヒドラジンに対する取り扱い負担などを改善。全用途への置き換えとは別
LTP/JAXAの企業紹介、掲載年不明JAXAによる材料開発と企業での活用方針を確認固体推進薬の製造を簡素化。この記事だけでは軌道打ち上げ実績を確認できない
端面燃焼式ハイブリッド/ISAS・2024年研究紹介実用化に向けた研究開発燃え方と十分な推力の両立。液体・固体の長所を全て自動で得られるわけではない
水の電気分解推進/ESA・2021年の研究例適用ミッションの比較とシステム要求の検討貯蔵・取り扱いを改善。この研究報告を宇宙実証とは呼ばない
ヨウ素対応カソード/ESA・2025年紹介2024年に研究活動を終了。紹介時点では推進系全体への組み込み準備カソードは電子を供給する部品。部品の開発と完成システムの飛行実績を分ける

出典は各方式の説明にリンクした開発主体の資料。到達段階はその資料の発表時点、本稿の確認日は2026年10月20日です。

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