1. 身近な「家電・車の中の OS」を逆算する
家のエアコン・車のエンジン制御・新幹線・ATM・カーナビ・カメラの中身。これらの組込み機器の OS の多くは、日本発の TRON (T-Engine) が動いている。これを 1984 年に始めたのが東京大学の 坂村健。
日本発の OS が世界の組込みで使われない可能性。1980 年代の「日米貿易摩擦」で TRON は不当に攻撃されたが、それでも世界の組込み機器で広く使われ続けている。「IoT」「ユビキタス」概念の祖。
2. 100 文字でわかる
坂村健 (1951〜)。日本の CS 学者、東洋大学教授・東京大学名誉教授。1984 年 TRON プロジェクト開始、組込み OS の世界標準。1980 年代から「ユビキタス・コンピューティング (現 IoT)」を構想。
3. 500 文字でわかる
1951 年東京生まれ、慶應義塾大学工学部卒、東京大学博士。1984 年、東京大学助手時代に TRON (The Real-time Operating system Nucleus) プロジェクトを発表 — 「汎用 PC 用とは別の、組込み機器に最適化した OS が必要」と提唱。ITRON (組込み)、BTRON (PC)、CTRON (通信)、MTRON (マクロ) など、用途別のサブセットを設計。1989 年 BTRON が日本の小学校標準教育用 PC OS に決まる寸前、米国通商代表部 (USTR) が 「日本市場の不公平」と圧力、結果的に BTRON は採用されず。しかし ITRON は組込み機器向けに静かに普及、家電・車・産業機器・新幹線・ATM・カーナビなど、日本の組込み機器の 60% 以上で TRON が動いている。1980 年代後半から「ユビキタス・コンピューティング」(現代の IoT) を提唱、世界の研究者の中で 30 年早く未来を見ていた。現在 INIAD (東洋大学情報連携学部) 学部長、デジタル社会の教育・標準化を主導。
4. もっと詳しく
TRON の誕生 (1984)
1984 年、東京大学助手時代に TRON プロジェクト発表。「家電・車・産業機器に Windows のような重い OS は不要、軽量・リアルタイム・無料の OS を作る」を理念に。ITRON (組込み)、BTRON (PC)、CTRON (通信)、MTRON (マクロ) の 4 系統で進めた。
BTRON 騒動と日米貿易摩擦 (1989)
1989 年、文部省が「教育用パソコン OS」として BTRON を選ぶ寸前、米国 USTR (通商代表部) が「日本市場の不公平」と日本政府に圧力、Super 301 条項候補に。日本政府は屈し、BTRON 採用を撤回。「日本独自の OS が、米国圧力で潰された」象徴的事件。
ITRON が組込みで世界標準に
しかし ITRON (組込み機器向け) は静かに普及、家電・車・産業機器に最適化された軽量 OS として、日本の組込み機器の 60-70% で稼働。世界の組込み機器でも上位シェア (Linux と並ぶ存在)。「Free of Royalty (ライセンス料無料)」が普及の鍵。
ユビキタス・コンピューティング (1980s-)
1980 年代後半から「ユビキタス・コンピューティング」(あらゆる物がコンピュータ化される未来) を提唱、現代の IoT (Internet of Things) の祖。「Where to go, the computer should be there」(行く先々にコンピュータがあるべき) という哲学。30 年早く未来を見ていた。
INIAD と現在
2017 年、東洋大学に INIAD (情報連携学部) を新設、学部長就任。「全学生がプログラミング・データを使える」教育を提唱、文系・理系を超えた IT 教育を進める。
5. 現代への影響
- 組込み OS: 日本の家電・車・産業機器の主流
- IoT 概念: 「ユビキタス・コンピューティング」を 30 年前から
- INIAD 教育: 文理融合の IT 教育
- 標準化活動: ISO / IEC / 日本工業規格等での貢献
- 「日本発の技術が世界で使われる」象徴
6. もっと知りたい人へ
- Wikipedia (日本語): 坂村健
- TRON Forum 公式: https://www.tron.org/
- 著書「IoT とは何か」「電脳社会の主役は誰か」(坂村健)
7. 次の話
EP.55 では 暦本純一 を扱います。マルチタッチ画面の源流 SmartSkin を 2002 年に発明した、Sony CSL の HCI 研究者。
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