生成AIが自社について、古い価格を答える、終了したサービスを現行として説明する、他社のサービスと混同する ── こうしたことが起きます。
この回は を扱います。直接の修正はできないという前提のうえで、何ができるかを整理します。
1. まず原因を切り分ける
対処は原因によって変わります。同じ「誤り」でも、直し方が違います。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処の方向 |
|---|---|---|
| 古い価格・古いサービス名 | 過去の情報が残っている | 現行情報を明確な形で出し直す |
| 他社と混同している | 名前が似ている、情報が薄い | 自社を特定できる情報を増やす |
| 存在しないサービスを説明 | 断片から推測されている | 提供範囲を明示する |
| そもそも何も出てこない | 参照できる情報がない | 情報を公開する(誤情報以前の問題) |
| 事実と異なる評価・評判 | 第三者の情報を参照している | 一次情報を整え、必要なら発信元に対応 |
3行目が特徴的です。情報が少ないと、AIは埋めようとします。「この会社はこういう会社だから、たぶんこういうサービスもあるだろう」という推測が、断定的な説明として出てくる。沈黙は誤情報を招くという構造があります。これは の一般的な性質で、情報が無いことと、無いと明記されていることは別として扱われます。
提供していないサービスについて明示的に書くのは奇妙に感じますが、有効な場合があります。「◯◯は提供していません」と明記すれば、推測で埋められる余地が減ります。特によく誤解される領域については書く価値があります。
2. できること・できないこと
現実的な期待値を最初に確認します。できないことのほうが多いというのが率直なところです。
| やりたいこと | できるか |
|---|---|
| 回答内容を直接書き換える | できない |
| 過去の学習データから消す | できない |
| 事業者に報告する | 窓口があれば可能。反映は保証されない |
| 自社サイトの情報を整える | できる。最も確実な手段 |
| 第三者の誤った情報に対応する | 発信元しだい。可能な場合がある |
4行目が中心になります。自社サイトの情報を、明確で・新しく・機械可読な形で出し直す。回りくどく見えますが、これが最も確実です。
3. 訂正情報の出し方
情報を出し直すときの形が重要です。本文を書き換えるだけでは、古い情報が残り続けることがあります。
- 1現行情報を、明確な形で書く — 曖昧さを残さない(EP.08 の定義の書き方)
- 2更新日を明示する — いつ時点かを示す()
- 3古い情報のページを消さない — 「これは◯年時点の情報です」と明記して残す
- 4構造化データにも反映する — 本文と一致させる(EP.09)
- 5よくある質問として書く — 誤解されている点を、質問の形で
3番目が意外に効きます。古いページを削除すると、その情報がどこかに残ったまま「否定される機会」を失います。残したうえで「この情報は◯年時点のもので、現在は△△です」と書けば、古い情報に辿り着いた側も現行を知れます。
5番目も有効です。誤解されている点を、そのまま質問の形で書く。「◯◯は提供していますか?」「いいえ、提供していません。類似の△△であれば…」という形にすると、そのまま回答として使える構造になります。
4. 事業者への報告
多くの事業者は、誤った回答についての報告窓口を持っています。ただし反映は保証されません。
- 回答の全文を記録する — 後から再現できないことがある
- どう質問したかを記録する — 質問文によって結果が変わる
- いつ、どのサービスで起きたか — 事業者と時期を明記
- 正しい情報と、その根拠のURL — 訂正の材料を添える
1番目を必ずやってください。同じ質問をしても、次は違う回答が返ることがあります。「さっき見たときは違った」では報告になりません。画面の記録を残してください。
報告は有効な手段ですが、反映の時期も可否も保証されません。報告と並行して、自社サイト側の対応を必ず進めてください。報告だけで待つのは、対処として不十分です。
5. 深刻な場合の判断
誤情報の内容によっては、事業への実害が出ます。程度に応じた対応が要ります。
| 深刻さ | 例 | 対応 |
|---|---|---|
| 軽微 | 古いサービス名で説明される | 情報を出し直す。急がない |
| 中程度 | 価格が実際と違う | 急いで情報を整える。窓口対応も準備 |
| 重い | 提供していないサービスを提供していると説明 | 問い合わせ窓口に共有し、対応を統一 |
| 極めて重い | 事実と異なる不利益な内容 | 法務と相談。記録を保全 |
3行目は見落とされがちですが、現場が困ります。「AIで見たのですが」という問い合わせが来たとき、担当者が知らなければ対応がばらつきます。誤情報が出ていることを、問い合わせ窓口に共有しておくだけで、現場の混乱はかなり防げます。
4行目については、記録の保全を最優先にしてください。回答の内容、日時、質問文。後から再現できない可能性があるので、気づいた時点で記録することが重要です。「あとでまとめて」と考えているうちに、同じ質問で別の回答が返るようになり、証拠が消えます。
6. 平常時にやっておくこと
誤情報が出てから動くより、平常時の備えのほうが効きます。
- 1定期的に自社について質問してみる — EP.11 の測定と同じ仕組みで
- 2よく誤解される点を把握しておく — 問い合わせの内容から分かる
- 3現行情報を明確に保つ — 曖昧な記述は誤解の余地になる
- 4提供範囲を明示する — やっていないことも書く
- 5問い合わせ窓口と情報を共有する — 気づいたら伝える経路を作る
1番目は、EP.11 で作った測定の仕組みがそのまま使えます。引用されているかを確認するついでに、内容が正しいかも見る。追加の手間はほとんどかかりません。むしろ引用されているのに内容が間違っているという状態が最も危険なので、両方を同時に見る意味は大きい。
そしてこの対応は、AIのためだけではありません。曖昧な記述を明確にし、提供範囲を明示し、更新日を示す ── これらは人間の読者にとっても有益です。AI向けの対応として始めても、結果としてサイト全体の質が上がります。次回、この「両立する」という構造を、連載全体の立場としてまとめます。
直接の修正はできない。対処は自社の情報を明確・新しく・機械可読な形で出し直すこと。沈黙は誤情報を招くので、提供していないことも書く。古いページは消さず、時点を明記して残す。事業者への報告は記録を添えて行うが、反映は保証されないので並行して自社側を進める。平常時は定期的に自社について質問してみるのが最も安価な備えです。
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