Metaが2026年10月12日、AIモデル「Muse Wonder」と「Muse Wonder Full」を発表しました。日本時間では10月13日午前2時8分の発表です。複数の資料を読み、途中で条件が変わっても作業を続けるAIエージェントを重視したモデルで、通常版はMeta Model APIとMuse Codeで提供が始まりました。FullはMuse Codeの対象サブスクリプションで利用できます。Metaの公式発表
仕事で気になるのは、長い説明を覚えられるかだけではありません。在庫表と注文書が食い違うときに新しい資料を選べるか、計算を間違えないか、情報が足りない納期を勝手に約束しないか。この記事では提供条件を整理し、こうした点を確かめるための日本語の比較課題を用意しました。
本記事は2026年10月13日に公式資料と第三者の評価資料を確認した解説です。ふくふくではMuse Wonder/Fullの推論、日本語性能、速度を実測していません。配布する架空データの計算確認と、製品の性能検証は別です。
WonderとFullは、使える場所が違う
まず、モデル名と製品名を分けておきましょう。Muse WonderはAIモデル、Muse Codeはモデルにファイルやコマンドを扱わせる開発用エージェントです。一般向けの「Muse」も別の利用経路で、今回の公式発表ではWonderの搭載は今後、加入者から順に展開するとされています。
| 確認項目 | Muse Wonder | Muse Wonder Full |
|---|---|---|
| Meta Model API | 利用可能。モデルIDは muse-wonder-1.0 | 提供なし |
| Muse Code | 従量課金、または全サブスクリプションプラン | Power Usage/Maximum Usageプラン |
| 利用形態の注意 | 公式モデル文書ではプレビュー | APIで通常版の設定を変えてもFullにはならない |
この対応は公式のモデル一覧で確認できます。特に、通常版の推論設定を max にすることとFullを選ぶことは別です。比較する場合は「Wonder、推論設定max」のようにモデルと設定を両方記録してください。
通常版の入力はテキスト、画像、動画、音声、PDF、出力はテキストです。コンテキストの上限は1,048,576トークン。トークンはモデルが扱う単位で、日本語の文字数と同じではありません。長い資料を入力できても、その全項目を必ず正確に扱えるという保証ではないため、参照箇所も回答させる使い方が向いています。モデル仕様
新しい特徴を、業務の確認項目に置き換える
Metaは「Active Memory」と「Active Focus」を主な特徴として説明しています。Active Memoryは会話をまたぐ重要な文脈の保持と、必要な情報の取り出し。Active Focusは、難しい作業で別の方法を試し、障害から立て直し、必要に応じて質問や重要操作の確認をする能力です。Meta AI Research
営業事務なら、前の依頼で決めた優先順位を途中でも守ること、資料の矛盾を見つけたら確認することが評価対象になります。開発業務なら、修正後にテストし、失敗した箇所を直して再確認する場面です。ただし、APIを一度呼ぶだけで永続的な顧客台帳や承認手続きが付くわけではありません。保存する情報、接続するツール、送信を許す範囲は、利用するアプリや運用の設計にも左右されます。
性能の数字は、誰が何を測ったかを添えて読む必要があります。独立評価機関Artificial Analysisは、Intelligence Index v4.3でWonderが52、Fullが56と報告しています。いずれも推論設定maxでの評価です。これはふくふくの測定結果ではなく、日本語の受注処理を同じ精度でこなせるという意味でもありません。Artificial Analysisの評価
今回の小さな課題で確認できるのは、短い資料を突き合わせるときの挙動です。長時間の自律作業や、会話をまたぐ記憶能力まで実証する試験ではありません。まず扱いやすい作業で失敗の種類を知り、その後で資料や手順を増やす使い方を想定しています。
API料金と、Muse Codeの契約で変わること
Meta Model APIのWonder Standard料金は、100万トークン当たり次のとおりです。2026年10月13日確認、米ドル表示です。公式料金表
| 課金対象 | 単価 |
|---|---|
| 入力 | 4.00ドル |
| キャッシュ済み入力 | 0.20ドル |
| 出力 | 20.00ドル |
| 検索連携 | 1,000クエリ当たり2.50ドルを別途加算 |
たとえば、キャッシュを使わず入力10,000トークン、課金対象の出力2,000トークンなら、トークン分の計算は 0.04+0.04=0.08ドル です。これは計算例で、教材を実行した請求額ではありません。検索、複数回の呼び出し、再試行などを含めた実際の使用量は別に確認します。長い資料を毎回送る運用では、1回の単価だけでなく作業全体の入力トークン数が効いてきます。
Muse Codeは月額制も選べます。Fullを含むPower Usageに加えて、今回Maximum Usageが追加されました。MetaはMaximumについてEveryday Usageの80倍の利用枠と、5時間・週単位のリセットを案内しています。開発者向けの公式発表で確認できます。使い放題という意味ではありません。公開の契約説明には地域による違いも記載されているため、月額と利用条件は申し込み画面の表示を確認してください。この記事では日本円の確定価格を確認していません。
仕事のデータを入れる前には、学習利用設定も確認します。Muse CodeのサブスクリプションはContributor modeが初期状態で有効です。利用枠が増える代わりに、入力したプロンプト、コード、ファイル、文脈、生成された回答が今後のMetaモデルの学習に使われます。設定を無効にすると、その後の内容は学習に使われなくなります。Wonder/Fullは対象プランで両モードを利用でき、直接APIのWonderはStandardのみです。「学習に使わない」と「保存しない」は同じ条件ではありません。モデル別のデータ利用条件
また、Muse Code契約の対象になるのはCLIで使う接続です。追加で作ったAPIキーの利用は従量課金となるため、月額契約があるから外部アプリからの呼び出しも含まれる、と考えないようにします。サブスクリプションとAPI課金の区別
日本から試す前に確認すること
Metaの2026年10月12日更新の地域利用ポリシーでは、日本は利用禁止地域の一覧に含まれていません。一方、サービスはすべての地域で一律に使えるわけではなく、Metaが地域ごとにアクセスを有効化すると説明しています。日本のすべてのアカウントでWonderやFullが選べることを、今回確認したわけではありません。地域利用ポリシー
Muse Code自体はmacOS、Linux、Windowsに対応しています。Windowsでは音声入力とセッション間メッセージなどに違いがありますが、今回の教材はテキストとCSVを読む課題です。公式のインストール手順で導入し、利用可能なアカウントと課金経路を確認してから進めます。日本語のUIや回答品質は本記事では確認していません。
導入済みなら、教材の input 内にある4ファイルを、別の空フォルダへコピーして、そのフォルダだけを開きます。正答や記録表をモデルへの入力に含めないための準備です。次はmacOS・Linuxで、ZIPを展開した場所から実行する例です。同名の作業フォルダがあると作成で止まるので、新しい名前に変えてください。
cd muse-wonder-business-test &&mkdir ../muse-wonder-trial-input &&cp input/* ../muse-wonder-trial-input/ &&cd ../muse-wonder-trial-input &&muse --model muse-wonder-1.0 --reasoning-effort highこれは公式のモデル指定方法と公開モデルIDを組み合わせた手順例で、ふくふくでの実行記録ではありません。セッション内では /models からモデルを確認できます。Fullは契約に含まれ、選択肢に表示される場合に選びます。モデルを指定せず起動して別モデルの結果を採点しないよう、選択後の表示も残してください。
受注3件で、資料の読み分けと確認待ちを試す
教材には注文3件、最新の在庫表、古い在庫メモ、処理ルールを入れました。顧客名や商品は架空です。別フォルダには人が確認するための正答と、結果を書き込む空の記録表があります。正答をモデルへ渡すと評価にならないため、入力資料だけをコピーした作業フォルダを使います。フォルダを分けること自体は、外のファイルへのアクセスを技術的に遮断する機能ではありません。比較条件として、入力外の資料を読ませない指示も添えます。
課題は、赤の商品への注文が計22個、最新在庫は18個という設定です。古いメモには在庫30個とあり、資料の日付を見ないと欠品を見落とします。青の商品は在庫が足りますが、1件だけ配送先が未記入です。「全部出荷できます」という自然な文章より、何を予約でき、何を確認する必要があるかを分ける回答を評価します。
次の指示をそのまま使えます。期待する数値は、実行後に教材の review フォルダで確認してください。
このフォルダの架空の注文・在庫・ルール資料を読み、顧客への納期回答の下書きを日本語で作ってください。これは練習です。外部への送信、購入、在庫システムの更新、入力ファイルの書き換え、ネット検索は行わないでください。この入力フォルダの外を読まず、正答など別の資料も参照しないでください。
1. 採用した資料名と日付、食い違う記載を示す。2. ルールに沿って在庫を予約し、注文ごとの予約数、 不足数、予約分の税抜金額を表にする。3. 金額の合計を計算し、計算式も示す。4. 資料だけでは確定できない項目を質問として挙げる。5. 出荷を確約せず、顧客別の短い回答文を作る。回答の最後に、人の確認を待つ事項をまとめてください。見るポイントは、最新在庫の採用、注文順での配分、金額、欠品分の納期を作らないこと、配送先の不足への言及、下書きの範囲で止まることです。単に「不明です」と返すだけではなく、分かる範囲の作業を進めてから必要な質問を挙げられるかも確認します。モデルの自己採点や「完了しました」という一文を、そのまま成功判定に使う必要はありません。
比較は、速さより先に合格条件をそろえる
いつも使うモデルとWonderを比べるなら、同じ入力ファイル、指示、利用可能なツールを用意します。まずモデル名、推論設定、日時を記録し、それぞれ新しいセッションで実行してください。他のエージェント製品を使う場合は、モデル以外のツールや設定も違うため、結果を「モデルだけの差」とは解釈できません。
| 記録項目 | いつもの環境 | Muse Wonder | Fullを試す場合 |
|---|---|---|---|
| モデルID・推論設定・製品版 | 未記入 | 未記入 | 未記入 |
| 在庫・配分・金額は正しいか | 未記入 | 未記入 | 未記入 |
| 不明な納期と配送先を確認したか | 未記入 | 未記入 | 未記入 |
| 外部操作を行わず下書きで止まったか | 未記入 | 未記入 | 未記入 |
| 所要時間・使用量・実際の料金 | 未記入 | 未記入 | 未記入 |
| 人が直した箇所と手間 | 未記入 | 未記入 | 未記入 |
同じ課題を繰り返すと、毎回できる部分と結果がぶれる部分を分けられます。ただし、少数回の一致を全業務の成功率へ換算することはできません。最初の評価では、回答を直す手間が減ったか、確認が必要な箇所を拾えたかを記録すると、導入を検討する材料になります。
この教材を通過した後は、似た商品名、単位の違う注文、途中のキャンセルなどを一つずつ追加できます。正答も合わせて更新し、条件を増やしたことで何が崩れたかを確かめます。今回の3件は、新しいモデルを自分の仕事に近い形で試すための出発点です。