ふくふくHukuhuku Inc.
EP.12STEM対象: 全学年 12分公開: 2026-05-10

自分の研究をLaTeXで論文化

数式が綺麗に出る論文組版ソフト LaTeX。Overleaf を使って、自分の研究を「本物の論文」の形式で発表する。

#中高生#LaTeX#論文
シェア

学校の自由研究や探究学習、いつかは大学の卒業論文。「研究を文章にする」スキルは、プログラミングと同じくらい一生使えます。今回は、世界中の研究者・大学生が使う組版ソフト LaTeX(ラテフ/レイテック) を、ブラウザだけで動く Overleaf で体験。自分の研究を「本物の論文」形式で発表できるようになります。

今回のゴール

① LaTeX が「Word より綺麗に数式・図表が並ぶ」理由を理解する ② Overleaf にサインアップして1ファイル目を書く ③ 数式・図表・参考文献・章立て・目次の入れ方を覚える ④ EP.06(探究学習)で作った分析結果を論文形式の にする

Step 1: なぜ LaTeX か

Word の限界:① 数式エディタが手間(複雑な式は崩れる)/ ② 図表番号が手動更新でズレる / ③ 参考文献の整形が苦痛 / ④ ページ数が増えると重い・落ちる。 LaTeX の強み:① 数式が綺麗(数学記号は世界標準)/ ② 図表番号・章番号・引用が自動採番/ ③ 参考文献は BibTeX で一括管理/ ④ テンプレートを変えるだけで投稿先の体裁に自動変換。 世界中の物理・数学・コンピュータサイエンス分野の論文の 9割以上が LaTeX。大学に進むなら必須スキル。

Step 2: Overleaf を開く(インストール不要)

Overleaf(https://www.overleaf.com/)は LaTeX のクラウド版。Google アカウントでサインインすれば、ブラウザだけで論文が書けます。無料プランで自由研究レベルなら十分。

Overleaf 公式トップページ。「\\begin{anything}」のロゴと、サインアップ画面、エディタ画面のプレビューが並ぶ
Overleaf トップ画面。下半分に「左:LaTeX ソース/右:自動コンパイル PDF」のエディタ実画面プレビュー
  1. 1https://www.overleaf.com/ にアクセス → Sign up → Google で連携
  2. 2ダッシュボードで「New Project」→「Blank Project」を選択
  3. 3タイトルを入力(例: my-first-paper)
  4. 4左側がエディタ、右側がプレビュー。書き換えると右側が自動更新

Step 3: ハロー、LaTeX!(最初の1ファイル)

Blank Project を開くと、すでに `\documentclass...` から始まる雛形が入っています。これを以下に置き換えてみましょう。

main.tex(最小の論文テンプレート)
Code
\documentclass[11pt,a4paper]{article}\usepackage[utf8]{inputenc}\usepackage[japanese]{babel}    % 日本語対応\usepackage{amsmath,amssymb}    % 数式\usepackage{graphicx}            % 図\usepackage{hyperref}            % リンク
\title{自由研究:プログラミングで$\pi$を求める}\author{ふくふく学園 \\ 山田太郎}\date{2026年5月}
\begin{document}\maketitle
\begin{abstract}モンテカルロ法を用いて円周率 $\pi$ を計算した結果、点の数を増やすほど真値に近づくことが確認できた。\end{abstract}
\section{背景}円の面積から $\pi$ が求められることは知っている。しかしコンピュータで $\pi$ を求める方法は色々ある。
\section{方法:モンテカルロ法}正方形に乱数で点を打ち、円の中に入った比率から $\pi$ を逆算する:\begin{equation}\pi \approx 4 \times \frac{\text{円内の点の数}}{\text{全部の点の数}}\end{equation}
\section{結果}点の数 $N$ を $10, 100, \ldots, 10^6$ と変えて測定した結果、$N = 10^6$ で $\pi \approx 3.1416$ となり、誤差は0.001\%以下になった。
\section{結論}乱数を使っても精密な計算ができる。これがモンテカルロ法の威力。
\end{document}
Compile(ビルド)してみる

Overleaf は保存と同時に右側で PDF が自動生成 されます。表紙・章立て・数式番号・抽象 (Abstract) が、Word ではほぼ無理な品質で並びます。これがLaTeXの「魔法」の正体。

Step 4: 数式をたくさん書いてみる

数式の入れ方サンプル
Code
インライン数式は $E = mc^2$ のように \$ で囲む。
別行立てにするなら:\[  \int_0^\infty e^{-x^2}\, dx = \frac{\sqrt{\pi}}{2}\]
連立方程式:\begin{align}  ax + by &= 1 \\  cx + dy &= 0\end{align}
行列:\[  A = \begin{pmatrix}    a & b \\    c & d  \end{pmatrix}\]
ギリシャ文字: $\alpha, \beta, \gamma, \delta, \pi, \sigma, \Omega$
数式番号への参照:式 \eqref{eq:euler} は美しい:\begin{equation} \label{eq:euler}  e^{i\pi} + 1 = 0\end{equation}

Step 5: 図と表を入れる

図の挿入(Python で作った PNG を Overleaf にアップロード)
Code
% Python (matplotlib) で生成した montecarlo_pi.png を% Overleaf 左下の Upload からアップロードしてから
\begin{figure}[htbp]  \centering  \includegraphics[width=0.8\linewidth]{montecarlo_pi.png}  \caption{点数 $N$ と $\pi$ の推定誤差。両対数で直線になる。}  \label{fig:montecarlo}\end{figure}
図 \ref{fig:montecarlo} に示すとおり……
% 表\begin{table}[htbp]  \centering  \begin{tabular}{|c|r|r|}    \hline    点数 $N$ & 推定値 & 誤差 \\    \hline    100        & 3.16   & 0.6\% \\    10{,}000   & 3.140  & 0.05\% \\    1{,}000{,}000 & 3.1416 & 0.001\% \\    \hline  \end{tabular}  \caption{$\pi$ 推定の収束}  \label{tab:results}\end{table}

Step 6: 参考文献(BibTeX)

本物の論文には参考文献リストが付きもの。LaTeX では別ファイルに `.bib` 形式で書いておけば、引用順に自動整形してくれます。

refs.bib
Code
@article{metropolis1949,  author = {Metropolis, N. and Ulam, S.},  title  = {The Monte Carlo Method},  journal = {Journal of the American Statistical Association},  year   = {1949},  volume = {44},  pages  = {335--341}}
@book{knuth1997,  author = {Knuth, D. E.},  title  = {The Art of Computer Programming, Volume 2},  publisher = {Addison-Wesley},  year   = {1997}}
main.tex 内での引用
Code
本研究は Metropolis らの古典的な手法 \cite{metropolis1949} に基づく。
\bibliographystyle{plain}\bibliography{refs}

Step 7: テンプレートを使ってプロっぽく仕上げる

Overleaf のトップページから Templates に行くと、論文・卒論・履歴書・スライドなど 数千のテンプレート が無料で使えます。「学校の自由研究」用には Article (Plain)Academic Report、もう少し凝りたいなら Modern CVIEEE Conference Template など。

Overleaf Templates ページ。Journal articles / Bibliographies / Books などのカテゴリ別テンプレート一覧
Templates ページ。Journal / Bibliography / Books / CV / Presentation など用途別に数千のテンプレート
提出形式に合わせる

高校で「Word で提出」と言われた場合は、Overleaf で PDF 出力 → Word に貼るか、提出時だけ Word にコピペ。「自分は LaTeX で書いて綺麗な PDF を出す」と先生に断っておけばだいたい OK。

Step 8: 自由研究を論文化してみよう

EP.06(探究学習)EP.11(化学反応) で作った分析結果を、ここまで学んだ LaTeX で論文形式にまとめてみてください。Python 側で出した PNG・ をそのまま埋め込めば、研究らしい仕上がりになります。

  • Title / Author / Date
  • Abstract(要約)
  • Introduction(背景・目的)
  • Method(方法・データ・コード)
  • Results(図表で見せる)
  • Discussion(結果の解釈・限界)
  • Conclusion(結論)
  • References(参考文献)
提出先のレベルが一気に上がる

学会のジュニアセッション高校生対象の論文コンテスト大学のオープンキャンパス課題 など、最近は中高生でも本格的な論文を出せる場が増えています。LaTeX で書けるだけで「この子は本気だ」と評価が変わります。

シリーズ後半予告(EP.13〜)

EP.13 は核分裂連鎖反応シミュレーション。中性子・原子核・を、自分のパソコンで動かして見ます。物理の「原子核」の章が、コードで立ち上がります。

シェア

この記事の感想を教えてください

あなたの 1 クリックで、本当にこの記事は更新されます。「もっと詳しく」「続編希望」が一定数集まった記事は、 ふくふくが 実際に内容を拡充したり続編記事を公開 します。 送信したリアクションはお使いのブラウザに記録され、再カウントされません。

シリーズの外も探す:

まずは、現状を聞かせてください。

要件が固まっていなくて大丈夫です。現状診断と方針提案までを無料でお手伝いします。

無料相談フォームへ hello [at] hukuhuku [dot] co [dot] jp