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EP.12Space Science対象: 高1以上 14分公開:

自分で宇宙の道を計算しよう――学校の物理から軌道とスイングバイへ

ボールを投げる、円を描いて回る、速さと向きを足す。学校で学ぶ運動の考え方は、探査機の道を考える入口になります。この発展編では、手計算から始めて、初速を変えると軌道がどう変わるかを自分で試します。中学生は図と数字を、高校生は式のつながりまで追ってみてください。

#宇宙科学#MMX#探究学習#学校の物理#軌道計算
執筆 / 監修
松尾 亮合同会社ふくふく 代表社員

データ基盤・データパイプライン構築 / BI / 生成 AI 活用支援を専門とするエンジニア (28 年)。 本記事は AI 利用ポリシーに基づき、生成 AI の補助で執筆 → 人間が監修・編集して公開しています。

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ボールを投げる、円を描いて回る、速さと向きを足す。学校で学ぶ運動の考え方は、探査機の道を考える入口になります。この発展編では、手計算から始めて、初速を変えると軌道がどう変わるかを自分で試します。中学生は図と数字を、高校生は式のつながりまで追ってみてください。

学校のどの単元が、何に使われる?

学校での考え方宇宙での使い道この回で試すこと
速さ・距離・時間通信時間や移動時間の見積もり単位をそろえ、秒と日を換算する
三平方の定理縦・横の速度から全体の速さを求めるスイングバイ前後の速さを計算
力と加速度、等加速度運動重力で進行方向が変わる様子を求めるボールの弾道から始める
円運動と万有引力円軌道を保つ速さを求める地球付近の公転速度を計算
エネルギー保存遠くへ行くと遅くなる理由や脱出を考える楕円軌道と脱出速度を比べる
ベクトル・三角比速度を向きも含めて足す重力アシストの出入りの角度を変える
数列・関数・プログラミング短い時間ごとの運動を積み重ねる数値計算と公式の結果を照合する

実験1:まず、ボールの弾道を計算する

「弾道」は、投げられた物体などが描く道筋です。ここでは地面が平らで、重力の加速度gが常に下向きに9.8m/s²、空気抵抗はないとします。m/s²は「1秒ごとに速度が何m/s変わるか」の単位です。上向きに投げたボールは、1秒ごとに上向きの速度を9.8m/sずつ失います。

時刻t秒での横の位置をx、高さをy、投げ出す速さをv₀、角度をθ(シータ)とします。三角比で速度を横と縦に分けると、次の式になります。sinとcosは、角度に応じて縦・横へ分ける割合です。

数式・計算例(本文に記載した仮定で計算)

x = v₀ cosθ × t y = v₀ sinθ × t − ½gt²

10m/sで45度上へ投げると、横と縦の初速はどちらも約7.07m/sです。1秒後の横の位置は7.07m、高さは7.07−4.9=2.17m。頂点では縦の速度が0になるので、到達する時刻は7.07÷9.8≒0.722秒です。出発と同じ高さへ戻るのは、その約2倍の1.44秒後。横へ約10.2m進みます。参考:NASA・弾道の方程式

この放物線の式を、火星までそのまま延長してはいけません。地球から遠ざかると地球の重力の強さや向きは変わり、惑星間では太陽の重力が重要になるからです。使える式は、どんな条件を省いたかとセットで覚えます。

実験2:円軌道を回るには、どれだけ速ければいい?

円を描く物体は、速さが一定でも速度の向きが変わるため、加速度を持ちます。半径rの円を速さvで回るとき、中心へ向かう加速度はv²/r。太陽の重力が作る加速度はμ/r²と書けます。μ(ミュー)は、万有引力定数Gと太陽の質量Mを掛けた値です。

数式・計算例(本文に記載した仮定で計算)

v²/r = μ/r² → v = √(μ/r)

太陽から地球までの距離を1AUとして、r=149,597,870,700m、太陽のμ≒1.32712440018×10²⁰m³/s²を使います。計算するとv≒29,785m/s、つまり約29.8km/sです。ここでは地球の軌道を円とみなしています。実際の地球の速さは、楕円軌道上の場所によって変わります。定数の参考:NASA JPL・天体力学のパラメータ

電卓では、まずμ÷rを計算し、その平方根を取ります。mで計算した結果をkm/sにする最後の段階で1,000で割ってください。途中でkmとmを混ぜると、単位の違いが大きな誤りになります。

実験3:火星へ行く、いちばん基本的な楕円を描く

次は太陽を中心に、地球が半径1AU、火星が半径1.524AUの円を同じ平面で回っているとします。二つの円に内側・外側から接する楕円を使って移る方法が、ホーマン遷移です。この単純な条件での基本的な移り方ですが、最速の経路ではありません。実際のミッションでは別の条件や軌道も検討します。参考:NASA・惑星間軌道

楕円の長い直径の半分を「長半径a」と呼びます。この遷移では、a=(1+1.524)/2=1.262AU。楕円上の速さは、距離rの場所で次の式になります。これは太陽の重力だけを受けるときのエネルギー保存から得られる関係です。

数式・計算例(本文に記載した仮定で計算)

v² = μ(2/r − 1/a) 遷移にかかる時間 = π√(a³/μ) (楕円を半周)

火星の「未来の位置」へ向かう。
円軌道模型から計算した飛行時間258.915日・初期位相44.361°。距離尺度は共通、天体は軌道より拡大。地球と火星の直径比は実寸比。A/Bの矢印表記は太陽中心の理想速度変更。MMXの実航路ではない。天体・試料の質感は生成イラスト。観測画像ではなく、地形・粒径・天体の大きさは模式表現。陰影は立体感の表現で、位相や自転軸は再現しない。 図を拡大して読む

単位をmと秒にそろえて計算すると、地球側の楕円の速さは約32.73km/sです。円軌道の29.78km/sから約2.95km/s増やすと、この楕円へ移れます。火星側では楕円の速さが約21.48km/sになり、その半径の円軌道の約24.13km/sより遅くなっています。円へ合わせるには約2.65km/s増やします。半周の時間は約259日です。

この2.95km/sと2.65km/sは、地上からの打ち上げや、火星へ着陸するための全ΔVではありません。太陽中心の二つの円軌道間で、瞬間的に速度を変える理想モデルの差です。地球を離脱する仕事や火星重力による捕獲、惑星の大気、軌道の傾き、有限時間の噴射などは含めていません。

火星のいる場所へまっすぐ向けても、259日後には火星が動いています。このモデルで火星はその間に約135.6度進むため、出発時には到着方向の180度より約44.4度手前、つまり地球より公転方向に約44.4度先にいる必要があります。目的地の未来の位置に合わせる計算が、出発時期を選ぶ理由になります。

実験4:スイングバイを、速度の矢印で計算する

惑星が右向きに30km/sで動いているとします。惑星から見た探査機の速さは、遠方での進入時も退出時も10km/s。進入方向を上向き、退出方向を右上45度とする説明用の例です。惑星の近くの曲がり方は、ここでは計算せず、決まっているものとして使います。

数式・計算例(本文に記載した仮定で計算)

太陽から見た速度 = 惑星の速度 + 惑星から見た探査機の速度 進入:(30, 0) + (0, 10) = (30, 10) 退出:(30, 0) + (7.071, 7.071) = (37.071, 7.071)

括弧の中は、横向きと縦向きの速度です。全体の速さは三平方の定理で√(横²+縦²)。進入時は√(30²+10²)≒31.6km/s、退出時は約37.7km/sとなります。探査機が惑星に対して持つ10km/sは変わらなくても、太陽から見た速さは変わります。

質量1kgあたりの運動エネルギーの変化は、½(v出²−v入²)で計算できます。この例では約2.12×10⁸J/kg増えます。計算では速度をm/sに直します。エネルギーは無から生まれたのではなく、惑星の公転運動とのやり取りです。探査機に比べて惑星が非常に重いため、惑星側の変化はごく小さくなります。

教材では退出角を自由に変えられますが、実物でどの角度でも選べるわけではありません。惑星の質量、接近する速さ、最も近づく距離が、曲げられる角度を制限します。惑星の表面や大気へ入り込めない条件もあります。この教材は速度の足し算を理解するもので、実現可能な接近航路を求める計算ではありません。

実験5:コンピューターで、少しずつ運動を進める

公式で一度に解けない複雑な場合には、短い時間ごとに位置と速度を計算する方法があります。太陽を原点とし、探査機の位置を(x,y)とすると、距離r=√(x²+y²)、加速度は次のとおりです。

数式・計算例(本文に記載した仮定で計算)

aₓ = −μx/r³  aᵧ = −μy/r³

マイナスは太陽へ向かうことを表します。位置が変われば、次に使う加速度も変わります。教材では1時間ずつ、①現在の加速度を求める、②次の位置を求める、③新しい位置で加速度を求める、④前後の加速度の平均で速度を更新する、という「速度ベルレ法」を使います。

数式・計算例(本文に記載した仮定で計算)

次の位置 = 今の位置 + 今の速度×Δt + ½×今の加速度×Δt² 次の速度 = 今の速度 + ½(今の加速度+次の加速度)×Δt

Δtは計算の時間刻みです。細かくすると一般に誤差を減らせますが、計算回数は増えます。また「細かくしたから絶対に正しい」わけでもありません。プログラムの式を間違えていれば、間違った答えを細かく計算するだけです。

答えを信用する前に、保存される量を調べる

この二体問題では、噴射がなければ、質量1kgあたりの力学的エネルギーε=v²/2−μ/rが保存されます。教材には、計算中のエネルギーのずれも表示します。初速を円軌道の値にすると円が保たれるか、火星への遷移では約259日後に反対側の1.524AUへ着くかも確認できます。答えを描くだけでなく、別の式と照合するのが検算です。

初速が約42.1km/sを超えると、この1AUからの太陽中心モデルでは、戻ってくる楕円ではなく脱出する軌道になります。地球表面からの脱出速度の話ではありません。「何の重力から、どの位置で脱出するか」を必ず添えましょう。

計算室で、円軌道、火星への遷移、45km/sの脱出を順番に試してください。その後、自分の初速を選び、形と周期がどう変わるか予想してから結果を見ます。Pythonの計算例と空の記録表も用意しました。Pythonの例は標準機能だけで動き、手計算の答えと数値計算の結果を表示します。

学校の物理は、宇宙の答えをそのまま暗記する道具ではありません。何を単純化したかを決め、式を作り、予測し、結果を確かめるための道具です。まず単純なモデルで筋道をつかむことが、複雑な探査を理解する足場になります。

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