「データはまず取るところから」を、自分の手で体験するシリーズです。中高生の自由研究 / 探究学習で「何を題材にすれば良いか分からない」という悩みに、身近な物理現象を計測する という解を提示します。
1. なぜ「センサーで自分で測る」のか
気象庁のデータや気象アプリを見れば、気温も湿度も気圧も今すぐ分かります。それでも「自分のセンサーで測る」ことに大きな価値がある理由を 3 つ。
- 1「平均」では見えない場所差を見つけられる: 公式の気温は地域全体の代表値。あなたの家のベランダ・北側の部屋・庭の日陰では、まったく違う数字が出る
- 2「データを取る側」の視点が手に入る: 既製のグラフを見るのと、自分でデータを取って自分でグラフを描くのは、得られる学びの深さがまるで違う
- 3仮説 → 計測 → 結論の科学のプロセスを体験できる: 「こうなるはず」と予想して、実際に測って、結果を比較する。これは大学の研究や仕事でも使う、最も基本的な思考の型
2. このシリーズで測れるもの
| 測れるもの | 代表センサー | 単位 | 価格目安 | 扱う EP |
|---|---|---|---|---|
| 気温 | BME280 / DHT22 / DS18B20 | ℃ | 300〜1,200 円 | EP.03 |
| 湿度 | DHT22 / BME280 / SHT31 | %RH | 300〜1,800 円 | EP.04 |
| 気圧 | BME280 / BMP280 | hPa | 300〜800 円 | EP.05 |
| 土壌水分 | M5Stack EARTH Unit / capacitive sensor | % | 300〜1,000 円 | EP.06 |
| CO2 濃度 | MH-Z19 / SCD30 / SCD41 | ppm | 1,500〜6,000 円 | EP.07 |
| 酸素 (O2) 濃度 | Grove O2 sensor / DFRobot O2 | % | 5,000〜15,000 円 | EP.07 |
| 照度 | BH1750 / TSL2561 / 光抵抗 | lux | 200〜800 円 | EP.07 |
「植物が光を浴びると CO2 が減って O2 が増える」を実際にデータで見るには、CO2 + O2 + 照度 のセットが必要。透明な容器に植物を入れて、光を当てたり消したりして変化を見る、定番の理科実験を デジタルで定量化 できます。
3. 始めるために必要なもの
ハードウェア (本体)
| 選択肢 | 特徴 | 価格目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| micro:bit v2 | ブロックでプログラミング、Bluetooth 内蔵、加速度・温度センサー内蔵 | 約 2,500〜3,500 円 | プログラム未経験〜中学生 |
| M5Stack Core2 | 液晶画面・ボタン・スピーカー内蔵、Unit でセンサー追加が楽 | 約 7,500 円 | 工作したい中高生 |
| M5StickC Plus | Core2 より安く小型、表示は小さいが十分 | 約 3,500 円 | コンパクトに作りたい人 |
| Arduino Uno R4 | 電子工作の定番、自由度高い・情報多い | 約 3,500 円 | 本格的にやりたい高校生 |
ソフトウェア (パソコン側)
- MakeCode (https://makecode.microbit.org/): micro:bit 用、ブラウザで動く、無料、日本語対応
- M5Burner: M5Stack 用ファームウェア書込みツール、無料
- UIFlow (https://flow.m5stack.com): M5Stack 用ブロックエディタ (Blockly ベース)
- VS Code + PlatformIO: 中級以上 (本格的に書きたい場合)
- Google Colab: 取ったデータの解析用 (matplotlib でグラフ化)
その他の道具
- USB ケーブル (本体に付属しない場合あり)
- ジャンパーワイヤー (オス-メス、メス-メス各 10 本程度)
- ブレッドボード (Arduino 派の場合)
- モバイルバッテリー (屋外計測する場合)
- マスキングテープと油性マジック (センサーに名前をつけて識別)
4. パーツリストと購入先
本シリーズの 商品名はクリックでスイッチサイエンス / M5Stack 公式店の検索ページに飛びます。アフィリエイトリンクではない ので、購入してもふくふくに収益は入りません。「実物の画像と価格を確認できる」ことだけが目的の純粋な紹介リンクです。
4-1. ふくふく推奨「とりあえず始めるセット」
micro:bit v2 (約 2,500 円) + BME280 モジュール (約 600 円) + ジャンパーワイヤー数本 (約 300 円)。これだけで EP.03〜05 の温度・湿度・気圧を全部測れます。家にあれば USB ケーブルとパソコンも必要。
M5Stack Core2 (約 7,500 円) + ENV III Unit (温湿度+気圧、約 1,500 円) + EARTH Unit (土壌、約 600 円) + CO2 Unit (約 3,500 円) + DLight Unit (照度、約 1,000 円) + ケーブル類。画面に値が出るので楽しい。EP.03-07 全部対応。
4-2. センサー別パーツリスト (2026 年 5 月時点の参考価格)
| EP | センサー名 | 型番例 | 価格目安 | 互換ハード |
|---|---|---|---|---|
| EP.03 | 温度 | DS18B20 (デジタル防水) | 300〜500 円 | 全機種 |
| EP.03/04 | 温湿度 | DHT22 / AM2302 | 500〜900 円 | 全機種 |
| EP.03-05 | 温湿度+気圧 | BME280 モジュール | 500〜800 円 | 全機種 |
| EP.03-05 | 温湿度+気圧 (M5Stack 用) | ENV III Unit | 1,500 円 | M5Stack |
| EP.04 | 高精度湿度 | SHT31 / SHT35 | 1,200〜1,800 円 | 全機種 |
| EP.06 | 土壌水分 (容量式) | M5Stack EARTH Unit | 600 円 | M5Stack |
| EP.06 | 土壌水分 (汎用) | Capacitive v1.2 module | 300〜500 円 | 全機種 |
| EP.07 | CO2 (NDIR) | MH-Z19C | 1,500〜2,500 円 | 全機種 |
| EP.07 | CO2 (高精度) | Sensirion SCD30 / SCD41 | 5,000〜7,000 円 | 全機種 |
| EP.07 | CO2 (M5Stack 用) | CO2L Unit (SCD40) | 3,500 円 | M5Stack |
| EP.07 | 酸素 (O2) | Grove O2 (DFRobot) | 5,000〜8,000 円 | 全機種 |
| EP.07 | 照度 | BH1750 モジュール | 200〜400 円 | 全機種 |
| EP.07 | 照度 (M5Stack 用) | DLight Unit | 1,000 円 | M5Stack |
4-3. オンライン購入先 (国内・推奨順)
| ショップ | URL | 強み | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| スイッチサイエンス | switch-science.com | M5Stack / micro:bit / Sparkfun 等の正規代理店、品質保証、解説豊富 | 初心者第一選択。日本語解説あり、FAQ も充実 |
| マルツ | marutsu.co.jp | 電子部品の老舗、店舗もあり実物確認可。法人取引も対応 | 本格的に揃えたい人、見積書が必要な学校・先生 |
| 秋月電子通商 | akizukidenshi.com | 電子部品が圧倒的に安い、種類豊富。秋葉原に実店舗 | コスト重視、知識がある程度ある人 |
| M5Stack 公式日本店 | m5stack-store.myshopify.com | M5Stack 製品の最新ラインナップ、Unit 専用品の品揃え最強 | M5Stack で揃えたい人 |
| Amazon Japan | amazon.co.jp | 翌日配送、レビュー多い。ただし非正規品・偽物に注意 | 急ぎで欲しい人、定番品を買う人 |
| KSY | raspi-shop.com | Raspberry Pi 公式代理店、micro:bit も扱い | Raspberry Pi 派生で揃える人 |
激安 (300 円以下) のセンサーは偽物・コピー品の可能性あり。特に DHT11/22 や BME280 はコピー品が多く、精度が出ない・すぐ壊れることがあります。最初の 1 個は正規代理店 (スイッチサイエンス・マルツ) で買うのが安全。慣れたら互換品でコストダウンも OK。
スイッチサイエンスとマルツは法人見積書・請求書発行に対応。学校予算・科研費で購入する場合はこちらが便利。M5Stack の教育機関向けセットもあり、20 台規模の一括導入も可能。
4-4. 「これだけ買えば EP.03-07 全部できる」買い物リスト
- M5Stack Core2 (本体): 1 台 約 7,500 円
- ENV III Unit (温度+湿度+気圧): 1 個 約 1,500 円
- EARTH Unit (土壌水分): 1 個 約 600 円
- CO2L Unit (SCD40): 1 個 約 3,500 円
- DLight Unit (照度): 1 個 約 1,000 円
- Grove ケーブル予備: 数本 約 500 円
- O2 センサー (光合成実験用、別売): 約 6,000 円
- 合計: 約 20,600 円 (光合成 EP.07 までフル対応)
最初は EP.03-06 用に「Core2 + ENV III + EARTH」だけ約 9,600 円から始めて、興味が続けば CO2 / O2 / 照度を追加する のが無理のない買い方です。
5. シリーズの流れ (構成案 (随時追加))
- 1EP.01 はじめに(本記事)
- 2EP.02 ハードを選ぶ — micro:bit / M5Stack / Arduino 比較
- 3EP.03 温度センサー — 室温の 24 時間変化を見る
- 4EP.04 湿度センサー — 窓を閉めると湿度はどれくらい上がる?
- 5EP.05 気圧センサー — 天気が崩れる前に気圧は本当に下がる?
- 6EP.06 土中水分センサー — 植物の水やりタイミングを捉える
- 7EP.07 光合成実験 — CO2 / O2 / 照度で植物の活動を見る
- 8EP.08 ログを取る — 1 週間データを保存する方法
- 9EP.09 ノイズと向き合う — 移動平均・外れ値処理
- 10EP.10 クラウドに送る — Google Sheets / ThingSpeak で蓄積
- 11EP.11 LED と警告 — しきい値で光らせる・通知する
- 12EP.12 自由研究の発表 — データから言えること・言えないこと
6. 自由研究テーマの例
| テーマ | 使うセンサー | 観測期間 | 得られる結論の例 |
|---|---|---|---|
| 家の中の場所別気温 | 温度 | 1 日 | 北側 vs 南側の温度差は ◯℃ |
| 雨の前は気圧が下がる説 | 気圧 | 1 週間 | 雨が降る ◯時間前から気圧が ◯hPa 下がっていた |
| 植物への水やり頻度 | 土壌水分 | 2 週間 | 夏は ◯日、冬は ◯日で土が乾く |
| 部屋の CO2 と眠気の関係 | CO2 | 勉強中 | 閉め切ると ◯ppm まで上がり、◯ppm を超えると眠くなる |
| 光合成は本当に光で増える? | CO2 + O2 + 照度 | 1 日 | 光を当てると CO2 が ◯ppm 減り、O2 が ◯% 増える |
| 洗濯物が乾く速さ vs 湿度 | 湿度 + 重量 | 数日 | 湿度が ◯% を超えると乾燥時間が ◯倍になる |
| 朝起きるベストな照度 | 照度 | 1 週間 | 目覚まし前 30 分の光照射で起きやすさが ◯ 倍 |
7. どれくらい時間がかかるか
- ハードを買う + 届く : 1〜3 日(Amazon / スイッチサイエンス / マルツ)
- 最初のセンサーを動かすまで : 1〜2 時間(EP.03 まで進めばここに到達)
- 1 つのセンサーのデータを 1 日記録する : 24 時間 (待ち時間)
- 複数のセンサーを組合せる : 半日〜1 日 (EP.07 光合成実験は 1 日見ておく)
- 自由研究としてまとめる : データ取得 1〜2 週間 + 解析 1 日 + レポート 1 日
本シリーズは 中学生以上が単独で進められる レベルを想定していますが、最初のハード選び・配線確認だけ大人がチェックすると安全です。学校の探究学習や夏休み自由研究の指導で使う場合、1 〜 2 EP を選んで取り組ませる のが現実的です(構成案 は時間がかかるため)。
8. なぜ「データの会社」が中高生向け記事を書くのか
ふくふくは普段、企業のデータ基盤を作る仕事をしています。「データを取る → 整える → 集計する → 活かす」 という一連の流れは、企業も中高生も同じ。違うのは題材だけです。
「自分でセンサーを刺してデータを取る」 ことは、データの仕事の 一番下のレイヤー にあたります。ここを体験しておくと、「データはどこかから降ってくるもの」ではなく「誰かが取ってきたもの」だという感覚が身につく。これは将来データを使う仕事 (研究・分析・エンジニアリング) に進むときの大きな差になります。
9. 次の話
EP.02 では micro:bit / M5Stack / Arduino のどれを選ぶか を、用途・予算・サポート情報量で比較します。読者リアクションに応じて、各 EP の内容を拡充したり、新しいセンサー (心拍・PM2.5・紫外線等) のテーマを随時追加していきます。
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