1. 身近な「マウス・GUI」を逆算する
パソコンのマウス、Web のリンク (ハイパーテキスト)、ビデオ会議 (Zoom)、複数ウィンドウ、リアルタイム共同編集 (Google Docs)、これらすべての元祖が 1968 年 12 月のダグラス・エンゲルバートの「The Mother of All Demos」。
マウスの発明が遅れていた可能性、Web のリンク・GUI・ビデオ会議も後発で発明された可能性。1 つのデモで 50 年先の未来を見せた、史上最も影響力ある技術プレゼン。
2. 100 文字でわかる
ダグラス・エンゲルバート (1925〜2013)。米国 CS 学者・発明家。1964 年マウス発明、1968 年「すべてのデモの母」でマウス・GUI・ハイパーテキスト・ビデオ会議を披露。1997 年チューリング賞。
3. 500 文字でわかる
1925 年米国オレゴン州生まれ、海軍 (レーダー技師) を経て CS 博士。1957 年 SRI (スタンフォード研究所) に入り、「コンピュータで人間の知能を増幅する」 ことを生涯のテーマに掲げる。1964 年、マウスを発明 — 木の箱に 2 つの金属円盤を付け、机上で動かすと画面のカーソルが動く。1968 年 12 月 9 日、サンフランシスコのコンピュータ会議で 90 分のデモを実施。世界初公開: マウス、ハイパーテキスト、ビデオ会議、リアルタイム共同編集、複数ウィンドウ、ワードプロセッサ。「The Mother of All Demos」 と呼ばれる。Xerox PARC・Apple・Microsoft 全部、このデモを見て製品化 した。1989 年 SRI 退社後、Bootstrap Institute で「人類の集合知能向上」研究を続ける。1997 年チューリング賞、2000 年米国家技術勲章。2013 年カリフォルニア州で 88 歳で死去。
4. もっと詳しく
「人間の知能の増幅」というビジョン
若き日に「人間が複雑な問題を解くにはコンピュータの助けが必要」と気づき、生涯のテーマに。当時のコンピュータは「数値計算機」、「人間の知能の道具」という発想は奇抜だった。
マウスの発明 (1964)
世界初のマウス試作機 (1964) は、木の箱に 2 つの金属円盤がついた素朴なもの。彼は 「マウス」 という呼び名を付けたが、由来は不明 (本人も忘れた)。特許を取ったが、Apple がライセンス料を払わず、彼の生涯で得た総額はわずか 1 万ドル。
「すべてのデモの母」(1968)
1968 年 12 月 9 日、SF Joint Computer Conference でのデモ。1000 人の聴衆に向け、彼は (1) マウス、(2) ハイパーテキスト (リンクで文書間を移動)、(3) 複数ウィンドウ、(4) 動画ライブ伝送 (リモート同僚との対話)、(5) リアルタイム共同編集、(6) 概要表示と詳細表示の切替を 90 分でデモ。聴衆は驚愕、しかし当時はあまりにも未来的で「夢物語」扱いだった。
Xerox PARC への流出
デモを見た Xerox PARC のメンバーが彼の SRI チームを引き抜き、PARC で実装。それを Apple のスティーブ・ジョブズが見学 (EP.27 のアラン・ケイの逸話)、Mac の GUI として商業化。エンゲルバートの発明はこうして世に出たが、彼自身は経済的恩恵を受けなかった。
5. 現代への影響
- マウス: 全 PC の標準入力デバイス
- ハイパーテキスト: Web のリンク、Wikipedia
- ビデオ会議: Zoom / Teams / Google Meet
- リアルタイム共同編集: Google Docs / Notion
- 複数ウィンドウ: 全 GUI OS
6. もっと知りたい人へ
- Wikipedia (日本語): ダグラス・エンゲルバート
- 「The Mother of All Demos」(1968) フル動画: YouTube で無料公開
- Doug Engelbart Institute: https://www.dougengelbart.org/
7. 次の話
EP.29 では マーガレット・ハミルトン を扱います。アポロ 11 号月面着陸を救った、ソフトウェアエンジニアという職業の名付け親。
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